私は通勤途中に昼食を買っています。朝早くから営業しているスーパーの中を通り抜けて職場に行くので必ずそこで買います。そうしないと、昼休みは暑いオフィス街を歩いてお店に入ることになってしまいます。当然、歩くことで昼休みの時間を消費するというデメリットもあります。朝のうちにご飯を買うことでそういう不利益を避けることができます。

さらに、毎日昼食にはこだわらず、感情を交えずいつも同じようなものを購入することで悩む時間も削減できます。いわゆる決断疲れを避けるための工夫ですね。というわけで本当に毎日変わり映えのない内容です。といっても私自身に食事に対する深いこだわりがないので、「昼休みだ。ご飯だ。食べた。終わり」なのです。このため食事のためにどこかへ出かけるという時間が省略でき、本を読む時間、昼寝する時間に充てることができています。しかもスーパーで買うのはお店で食事するより圧倒的に安い。我ながらいい行動パターンです。

私は昼食というものに対してかなりドライです。

世の中には「今日のお昼は何を食べようかな」と考えること自体を楽しみにしている人もいるでしょう。今日はラーメンにしようか、定食にしようか、それとも少しおしゃれな店に行ってみようか。新しくできた店を開拓するのも楽しいでしょうし、同僚と一緒に「あの店おいしいらしいですよ」などと話しながら店を探すのも、会社員生活の一部なのだと思います。

しかし私の場合、そこにあまり楽しみを感じません。「何を食べるか」という問題について、毎日毎日真剣に考える必要があるのだろうか、と思ってしまうのです。もちろん、旅行に行ったときなどは話が違います。せっかく普段とは違う場所に来たのだから、その土地の名物を食べてみたい。これは分かります。旅行先でコンビニのおにぎりだけ食べて終わり、というのも少々もったいないです(別にそれでもいいのだが)。

でも会社の昼休みは旅行ではありません。朝から仕事をして、ようやく昼休みになった。そして午後からまた仕事がある。その貴重な昼休みを使って、暑い中を歩き回り、「今日はどの店にしようかな」と考えるわけです。そして店に入って注文し、料理が出てくるのを待ち、食べ終わったらまた会社に戻る。

……そこまでして昼食に情熱を注がなくてもいい気がします。私にとって昼休みは、むしろ「仕事から一時的に逃げられる時間」です。だから私は、昼食そのものよりも、その後の時間を大切にしています。スーパーで買った昼食を自席で食べる。食べ終わる。ゴミを捨てる。そして本を読む。

これだけです。あるいは、眠ければ昼寝をします。昼休みが1時間あるとして、その1時間をすべて食事に使う必要はありません。食事を10分くらいで終わらせて、残りの50分を自分の好きなことに使えばいい。

私はこの「何もしなくていい時間」がかなり好きです。本を読んでいてもいい。目を閉じていてもいい。ぼーっとしていてもいい。誰かと会話をしなくてもいい。そして、ここが重要なのですが、こういう時間を確保するためには、昼食にかかる時間を短くするのが非常に効果的なのです。

「昼休みなのだから、みんなで外に食べに行くべきだ」

「せっかくの昼休みなのだから、毎日違うものを食べたほうが楽しい」

という考え方もあるでしょう。しかし、昼休みの過ごし方まで他人に合わせる必要はありません。食事が人生最大の楽しみという人なら、昼食に1時間使えばいい。友人や同僚と話すことが何より楽しい人なら(私は楽しくない)、みんなで食べに行けばいい。

私は本を読んだり、静かに過ごしたりするほうが楽しい。だったら、そちらを選べばいいのです。考えてみれば、これは昼食に限った話ではありません。

世の中には「選択肢が多いことは素晴らしい」という考え方があります。確かに選択肢が増えることで便利になることはあります。しかし、選択肢が多すぎると、「選ぶ」という作業そのものが発生します。そして人間は、朝起きてから夜寝るまで、意外なほど大量のことを決めています。

何時に起きるか。何を着るか。何を食べるか。どの電車に乗るか。どの仕事から片付けるか。帰宅したら何をするか。

そう考えると、「昼飯は毎日だいたいこれ」というルールを一つ作ってしまうだけでも、ずいぶん楽になります。

昼食について悩まない。昼食にお金をかけない。昼食のために暑い街を歩かない。昼食のために貴重な昼休みを消費しない。そして浮いた時間で本を読む。

なんだか夢のない話のようにも聞こえますが、私はこういう小さな合理化が結構好きなのです。毎日同じような昼食を食べて、毎日同じように本を読んでいる。

変化がない。刺激もない。しかし、それでいいのです。

人生には、刺激を求める時間と、刺激をなくす時間の両方が必要なのだと思います。昼休みくらいは、「昼休みだ。ご飯だ。食べた。終わり」でいい。そして残った時間で、本を読む。
私にとっては、それがなかなか快適な昼休みなのです。