病院であれライブハウスであれ美術館であれ、集客というのはとても大事です。人が来ないってことは存在意義がないってことであり、閉店に追い込まれてしまうからです。一方で、過密状態になってしまうと受けられるサービスの質が低下してしまい、悪い記憶しか残らないので、ほどほどの混雑具合がベストなのかもしれません。
では美術館における適度な混雑具合とはどれほどのものなのでしょうか。私はある日国立西洋美術館を訪れました。東京で過ごしたのは通算で20年。何度も訪れた場所です。しかし、「昔ってこんなに混雑してたかな・・・」という感想を持ってしまいました。何しろ最近は外国人観光客が増えました。日本社会全体にしてみればお金を落としてくれる観光客は経済を支えてくれるありがたい存在。でも一個人にしてみれば街が混雑するだけなのでこれといったメリットはありません。
美術館においても、静かに鑑賞しているというよりもなんとなくビジュアルのいい作品をスマホで撮影しているといった風情です。スマホが普及する前はそんなことなかったのに・・・。(ちなみに私の地元岡山の大原美術館は、「名画の前で撮影会が始まって他の人の鑑賞の妨げになってしまったことがある」ことを理由に撮影禁止。英断です。)
そういう人が増れば増えるほど、どうにもこうにも美術館が鑑賞、沈思黙考の場ではなくっていくのです。では、美術館にとって理想的な混雑具合とはどの程度なのでしょうか。もちろん経営という観点からすれば、入館者が多いに越したことはありません。入館料収入はもちろん、ショップやカフェの売上も伸びるでしょうし、人気が高ければ展覧会を開催するためのスポンサーも集めやすくなります。閑古鳥が鳴いているようでは、美術館そのものの存続が危うくなるのは間違いありません。
しかし、だからといって人気テーマパークのような状態が理想かと言われれば、私はそうは思いません。
美術館という場所の価値は、作品と向き合う時間そのものにあります。一枚の絵の前で立ち止まり、細部を観察し、作者の意図を想像し、自分自身の記憶や感情と重ね合わせる。そうした静かな対話こそが、美術館でしか得られない体験です。
ところが、人が多すぎると、その体験は驚くほど簡単に失われます。人気作品の前には人だかりができ、後ろから押されるようにして数秒眺めるだけで次へ進まざるを得ない。ようやく近づけたと思ったら、今度は誰かがスマートフォンを高く掲げて写真撮影を始める。鑑賞しているのか、人混みをさばいているのか分からなくなってしまいます。
私は、美術館は「少し人がいる」くらいが一番心地よいと思っています。他の来館者の存在がまったくないと、どこか寂しい雰囲気になりますし、人気のない施設という印象も受けます。一方で、展示室に十数人から二十人程度がゆったりと散らばり、それぞれが好きな作品の前で静かに立ち止まっているような空間なら、自分も自然と作品に集中できます。人がいることで緊張感が生まれながらも、互いに鑑賞を妨げない距離が保たれている状態です。
興味深いことに、この「適度な混雑」は、美術館側にとっても悪い話ではありません。あまりにも混雑すると、来館者の満足度は下がります。「疲れた」「よく見られなかった」という印象だけが残れば、次も来ようという気持ちは薄れてしまうでしょう。入館者数だけを追い求めるのではなく、一人ひとりが良い体験を持ち帰ることも、美術館の存在意義ではないでしょうか。
結局のところ、美術館の成功とは、年間入館者数という数字だけでは測れません。作品を見終えた帰り道、「今日はいい時間を過ごした」と思える人がどれだけいるか。その積み重ねこそが、美術館の本当の価値なのだと私は思います。
しかし、だからといって人気テーマパークのような状態が理想かと言われれば、私はそうは思いません。
美術館という場所の価値は、作品と向き合う時間そのものにあります。一枚の絵の前で立ち止まり、細部を観察し、作者の意図を想像し、自分自身の記憶や感情と重ね合わせる。そうした静かな対話こそが、美術館でしか得られない体験です。
ところが、人が多すぎると、その体験は驚くほど簡単に失われます。人気作品の前には人だかりができ、後ろから押されるようにして数秒眺めるだけで次へ進まざるを得ない。ようやく近づけたと思ったら、今度は誰かがスマートフォンを高く掲げて写真撮影を始める。鑑賞しているのか、人混みをさばいているのか分からなくなってしまいます。
私は、美術館は「少し人がいる」くらいが一番心地よいと思っています。他の来館者の存在がまったくないと、どこか寂しい雰囲気になりますし、人気のない施設という印象も受けます。一方で、展示室に十数人から二十人程度がゆったりと散らばり、それぞれが好きな作品の前で静かに立ち止まっているような空間なら、自分も自然と作品に集中できます。人がいることで緊張感が生まれながらも、互いに鑑賞を妨げない距離が保たれている状態です。
興味深いことに、この「適度な混雑」は、美術館側にとっても悪い話ではありません。あまりにも混雑すると、来館者の満足度は下がります。「疲れた」「よく見られなかった」という印象だけが残れば、次も来ようという気持ちは薄れてしまうでしょう。入館者数だけを追い求めるのではなく、一人ひとりが良い体験を持ち帰ることも、美術館の存在意義ではないでしょうか。
結局のところ、美術館の成功とは、年間入館者数という数字だけでは測れません。作品を見終えた帰り道、「今日はいい時間を過ごした」と思える人がどれだけいるか。その積み重ねこそが、美術館の本当の価値なのだと私は思います。
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