東京都港区の白金台にある松岡美術館。東京メトロ南北線の白金台駅から徒歩数分の位置にあります。
東京都庭園美術館の裏側にある、という言い方でもいいでしょう。

正直、有名な美術館とまでは言えないでしょう。私も東京から引っ越すことが決まり、これが最後とばかりに東京の色々なところを巡り歩いている中で知ったレベルですから・・・。(たぶん長期休暇で東京にやってきて「文化的別荘地」としてこの街には引き続きお世話になると思います。)




松岡美術館は、実業家の松岡清次郎が一代で蒐集した約2,400点の美術品を収蔵・展示している美術館です。古代オリエント彫刻、東洋陶磁器、日本画、フランス近代絵画など、世界各地の幅広いコレクションを緑豊かな環境で楽しめるのが特徴とされています。言い換えると、色々な作品を短時間でサクッと楽しむことができるというわけですね。

私が訪れた時は「風そよぐ情景 ヴィクトリア朝絵画・フランス印象派」という企画展が開催中でした。私がそこで見たのはブーダンやピサロ、モネ、シスレーといった名だたる画家たちの作品。おっと、この人こんな作品も描いていたのね、と知ることができました。他にもリーダーの風景画や、ペルジーニの清楚な女性像といった、注目して損はない佳品もありました。松岡美術館ってこじんまりしていますが、かなり中身は充実しているのです。知らないって恐ろしい・・・。

展示室を歩いていて感じたのは、松岡美術館の魅力は「大規模な美術館とは違う贅沢さ」にあるということでした。

例えば、国立西洋美術館や東京都美術館のような大きな館では、どうしても「有名作品を見る」という目的が先に立ちます。もちろんそれはそれで楽しいのですが、作品数が多く、来館者も多い。人気作品の前には人だかりができ、じっくり向き合うには少し気合いが必要です。

もう一つ忘れてはいけないのが、美術館そのものの雰囲気です。白金台という場所柄もあるのでしょうか。周囲は緑が多く、都心とは思えない落ち着きがあります。東京都庭園美術館の近くを歩き、静かな住宅街の中に入っていくと、突然この小さな美術館が現れる。その「知る人ぞ知る場所」という感じも魅力の一つです。

考えてみれば、東京にはこうした場所が本当に数多くあります。有名な観光地や大型施設だけではなく、長年そこにありながら、意外と知られていない文化施設が街のあちこちに存在している。

松岡美術館もその一つでしょう。約2,400点ものコレクションを個人の情熱によって築き上げ、それを現在まで公開しているという事実には驚かされます。一人の収集家が「これは後世に残す価値がある」と信じて集めたものが、今こうして多くの人を楽しませている。美術館とは、単に作品を並べる場所ではなく、ある人の人生そのものが形になった場所なのかもしれません。

東京を離れる前だからこそ、こうした場所の価値に気づくことができました。普段暮らしていると「いつでも行ける」と思って後回しにしてしまう。しかし、いざ離れるとなると、その街にどれほど多くの魅力が隠れていたのかに気づかされます。

次に東京を訪れる時、白金台の街をまた歩くことがあるでしょう。その時は、松岡美術館にも再び立ち寄りたいと思います。大きな話題になる場所ではないかもしれません。しかし、静かに美術と向き合える場所として、東京という街の奥深さを感じさせてくれる美術館でした。