就職(転職)活動を行っていると、いつかは内定が出ます。出ない場合は断念して終わりになりますが、諦めなければいつかは内定が出ます。しかし内定が出たからと行っても安心しては行けません。遠足は無事帰宅するまでが遠足。就職活動も契約書にサインするまで終わりとは言えません。

契約書にサインする前に、処遇条件が書面で提示されます。これが曲者です。よく読まないと、求人票と違うじゃないか、ということがしれっと紛れ込んでいたりします。なぜこんなことが起こるのか。別に悪意があって書面を準備したわけではなさそうです。

想像ですが、求人票は古いものを使いまわしていたら、古い労働条件が混入していた、だけど処遇条件を提示するときに求人票との齟齬を調べずに機械的に作ってそれで終わり、のようなことが「あるある」ではないでしょうか。

私の場合、こんなことがありました。
求人票にはフレックスと書いてあるのに処遇条件提示書にはそれがない。
求人票には年間休日117日と書いてあるのに処遇条件提示書は125日。
求人票には社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)加入とあるのに、処遇条件提示書には労災保険だけなぜか言及がない。労災保険料は労働者負担が発生しないから? でも、だからといって省略していいものなの? 

もちろん、年間休日が117日から125日に増えているなら歓迎すべき話です。しかし問題は数字の大小ではありません。問題は「どちらが正しいのか」がわからないことです。

転職活動中の人間にとって、労働条件は人生設計そのものです。給与はいくらなのか。休日は何日あるのか。フレックスタイム制度は使えるのか。退職金はあるのか。そうした条件を総合的に判断して入社を決めるわけです。

ところが求人票と処遇条件提示書の内容が違っていると、「ほかにも何か違っているのではないか」という疑念が生じます。

私はこういう場合、遠慮なく質問することにしています。

「求人票にはフレックスタイム制度ありと記載されていますが、今回の条件提示書には記載がありません。制度は適用されるのでしょうか」

「求人票では年間休日117日となっていますが、条件提示書では125日となっています。どちらが正しいのでしょうか」

この程度の確認は決して失礼なことではありません。むしろ当然の権利です。

企業側も人間ですからミスをします。採用担当者、現場責任者、人事部門、エージェントなど多くの関係者が関与するため、情報の更新漏れや記載ミスが発生することは珍しくありません。実際、確認してみると「求人票の更新が追いついていませんでした」「こちらの記載漏れでした」というケースもあります。

逆に言えば、質問した際の企業の反応こそが重要です。すぐに確認して訂正してくれるのか。質問に対して曖昧な回答しかしないのか。担当者ごとに言うことが違うのか。

その対応を見れば、その会社の仕事の進め方や組織風土がある程度見えてきます。採用活動というのは企業が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が企業を見極める場でもあります。面接では立派な理念やビジョンが語られますが、実際の会社の姿はこうした細かな事務手続きの中に現れるものです。

私は内定通知を受け取ると、つい安心してしまいます。しかし本当の意味でのゴールはそこではありません。条件提示書を確認し、疑問点を解消し、納得したうえで契約書に署名する。その瞬間までが転職活動です。

遠足は家に帰るまでが遠足。

転職活動は契約書にサインするまでが転職活動なのです。