転職活動をしていると適性検査というものを受ける羽目になります。これが面倒くさい。会社によって出題される問題が異なるのと、初見で判断しなければならない新手の問題があったりするので事前に完璧な対策をするのは不可能でしょう。

先日私が受けたのもそのような問題でした。察するに事務処理能力の的確さを評価することが目的なのでしょう。しかし驚いたのが、制限時間は20分であり、回答開始の前の例題説明もこの20分に含まれるというのです。つまり、丁寧に回答方法を理解しようとすればするほど、本問題に取り掛かる時間が少なくなるということなのです。おいおい、前提となる解法を理解しようとしたら本番のための問題が少なくなるって、何のペナルティでしょうか。曖昧な理解でもいいから先に進めということでしょうか。でもそれって自分の首を絞めるだけですよね・・・。

しかも困るのは、こうした適性検査というものが、単に知識量や学力だけを見ているわけではない点です。企業側としては、おそらく限られた時間の中でどれだけ正確に処理できるか、あるいは未知の状況にどう対応するかを測りたいのでしょう。しかし受験する側からすると、何を測定されているのかが曖昧なまま、ひたすら時計に追い立てられる感覚があります。

特に厄介なのが、問題そのものよりもルール理解に時間を取られるタイプです。図形を使った並べ替え、独特な記号の変換、複数条件を同時に処理させる問題など、慣れていないと頭の中で整理するだけで数分が消えていきます。そして、その理解時間すら制限時間に含まれている。これはスポーツで言えば、競技説明を聞いている間にも試合時間が減っていくようなものです。普通に考えて妙な話ではないでしょうか。

もちろん、世の中にはマニュアルをじっくり読んでから動く人もいれば、とりあえずやってみながら覚える人もいます。企業としては後者のようなタイプを好む場面もあるのでしょう。しかし、それが本当に仕事能力と直結するのかというと疑問も残ります。特に人事、総務、経理のように、制度や規程を誤読すると後で大事故になる職種では、むしろ慎重に確認する人のほうが適している場合もあるはずです。

ところが適性検査では、慎重さはしばしば不利に働きます。理解を優先すると時間がなくなり、速度を優先するとミスが増える。受験者は常にその板挟みに置かれるのです。しかも不思議なのは、企業側が求めている人物像と、検査で有利になる人物像が必ずしも一致していないことです。実務では丁寧さを求めるのに、試験では猛烈なスピード勝負をさせる。これはかなり矛盾しています。

さらに言えば、中途採用の転職活動でこれをやられると、何とも言えない気持ちになります。こちらは新卒学生ではなく、実際に職場で働いてきた経験があるわけです。給与計算や社会保険、労務対応のような業務では、締切に追われながらも正確性を維持することが重要でした。しかし適性検査では、その経験が直接評価されるわけではありません。延々と図形や記号を追いかけ、脳内パズルを高速処理することを求められる。いや、私は今まで何を積み上げてきたのだろう、と妙な虚無感すら出てきます。

しかも企業によって検査形式が違うため、一度慣れたと思った頃にまた別ルールの問題が現れます。将棋だと思っていたら急にチェスが始まり、次は囲碁のルール説明を20分以内で読まされるようなものです。これを何社も繰り返していると、転職活動というより、謎解きアトラクション巡りをしている気分になります。

もちろん企業側にも事情はあるのでしょう。大量応募の中から候補者を絞り込むには、一定の基準が必要です。しかし、それにしても、例題を読む時間まで削って本試験に組み込む設計は、もう少し何とかならないものかと思います。少なくとも受験者側からすると、能力測定というより、焦らせ耐性テストに近いのでした。