たまに、Kindle Unlimitedで無料なのを理由に引き寄せの法則が・・・とか、潜在意識を使って成功して云々、といった本を読むことがあります。そうか、イメージしたことがそのまま自分の人生に反映されるんだ! じゃあ億万長者になれるって考え続けたら億万長者になれるんだ!! すごいや!

そんなことを思って何年も経過しましたが、私はまったく億万長者ではありません。ただの人です。

一体、なぜ億万長者になれなかったのでしょう? 強く願ってないから? 逆に言うと強く願うと必ずなれるの? 強く願うと体がそっちの方向にひとりでにアクションを起こすの??

・・・この手の考え方には、一つの落とし穴があります。人が何かで成功するには、「私はかくありたい」という願望を持つのも大事ですが、「実際にそれを成し遂げる能力」を持ち合わせていなければなりません。たとえば億万長者になりたいのなら、ビジネスで成功する能力とか、儲かる株式を確実に予知する能力が必須です。でもそんな能力を持っている人なんてめったにいません。だから私もただの人のままなんですよ・・・。

しかし、ここで話を終えてしまうと、話はあまりにも身も蓋もありません。「能力がないから無理でした」で締めくくるなら、自己啓発本も、成功哲学も、夢を語ることさえ無意味になってしまいます。

本当にそうでしょうか。

私は思うのです。引き寄せの法則がまったくの嘘かというと、そうとも言い切れない。ただし、多くの人がイメージしているような「宇宙が勝手にお金を運んできてくれる魔法」ではないのだろう、と。

人は、意識を向けたものを見つけやすくなります。赤い車を買おうと思った瞬間、街中に赤い車が溢れていることに気づくように。これは心理学でいう「選択的注意」という現象です。億万長者になりたいと本気で考え続ければ、確かにお金の匂いがする情報や機会に敏感になるかもしれません。ビジネスのアイデア、投資の知識、人脈の重要性――それまで素通りしていたものが、急に意味を帯びてくる。

けれども、それは「願ったから実現する」のではなく、「願ったことで行動や判断が微妙に変わる」から結果が変わる可能性が出てくる、という話にすぎません。

そしてここが重要ですが、その「微妙な変化」を何年、何十年と積み重ねられる人は、実はそれほど多くないのです。多くの人は、強く願った翌日にはもう別のことで悩み、来月には違う夢を語っている。私もそうでした。億万長者を夢見たかと思えば、安定を求め、次の日には静かな生活が一番だとつぶやく。願望が揺れているのです。

さらに言えば、億万長者になる人は、単に願っているのではなく、異様なほど具体的に考え、執拗に試行錯誤し、失敗を繰り返しながら改善を続けています。能力とは、生まれつきの才能というよりも、その粘着質な試行回数のことなのかもしれません。

つまり、引き寄せの落とし穴は、「願えば叶う」という甘美な言葉が、「具体的な努力や能力の構築」をすっぽり抜かしてしまう点にあるのです。願望はスタート地点にすぎません。そこから地味な訓練、勉強、人との衝突、失敗、再挑戦という泥臭い道のりを歩けるかどうか。それを抜きにして、結果だけを欲しがっても、現実は動かない。

私は億万長者ではありません。しかし、「ただの人」のままでも、今日できる小さな行動を積み重ねることはできます。もしかすると引き寄せとは、宇宙の法則ではなく、「自分の注意と行動をどこに向け続けるか」という、ごく現実的な話なのかもしれません・・・。