「ルパン三世 カリオストロの城」。1979年の名作映画は今なお色褪せない名作とされています。美しい姫君をカリオストロ伯爵の魔手から救い出そうとルパンが奔走する・・・。そして最後に銭形警部が「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました・・・あなたの心です!」、この台詞によって多くの人の心を掴みました。
じつはカリオストロ伯爵というのは歴史上の人物でもあります。ウィキペディアによると、
アレッサンドロ・ディ・カリオストロ(Alessandro di Cagliostro、1743年6月2日 - 1795年8月26日)は、稀代の詐欺師として名が広まったフリーメイソン、オカルティスト。生年月日については諸説ある。本名はジュゼッペ・バールサモ (Giuseppe Balsamo)。カリオストロは医師、錬金術師、山師、など多くの肩書きを持っており、上流階級のなかに紛れ込み、低い身分から機会を見てのし上がろうとした姿勢から、アヴァンチュリエ(山師)と呼ばれた。
稀代の詐欺師として特徴づけられているカリオストロだが、壮年時期には愉快犯の色合いが強く、富裕層からまき上げたカネを貧民層に分け与えていた。
このように書かれています。詐欺内容としては、「若返りの水」とかいうオカルト商品を貴族たちに売り歩いていたというもの。アンチエイジングって昔の人も意識してたんですね。マリー・アントワネットを巻き込んだ「首飾り事件」にも関わっていたことで知られています。そして伯爵を名乗っていた割にはじつは貴族でもなんでもありません。まあ経歴詐称なんていつの時代にもある話ですね。
彼はカリオストロの城のモデルとも言われるイタリアのサン・レオ城に幽閉され、そこで亡くなっています。
さて、ここまで見ると、カリオストロ伯爵という人物は「稀代の詐欺師」という一言では片づけきれない存在であることが分かります。もちろん、やっていることは詐欺ですし、擁護の余地はありません。
しかし、そもそもそういう商品になぜ騙されるのか、と言われがちですが、より正確には「なぜ信じたくなるのか」と問うべきなのかもしれません。若さを保ちたい、老いを先延ばしにしたい、特別な存在でありたい・・・。そうした欲望は、18世紀の貴族だけでなく、現代人にも等しく備わっています。アンチエイジング産業がこれほど巨大化していることを見れば、むしろ何も変わっていないとも言えます。
詐欺とは、ゼロから嘘を作り出す行為ではありません。人の心の中にすでに存在している願望や不安を、少しだけ誇張し、都合よく言語化する作業です。カリオストロは、その作業に異様なまでに長けていた人物だったのでしょう。だからこそ、上流階級に食い込み、時に英雄のように振る舞うことすらできた。
一方で、騙される側も決して愚かだったわけではありません。理性があっても、人は不安になる。肩書きや地位があっても、老いと死からは逃げられない。詐欺に引っかかるという行為は、知性の欠如というより、人間であることの証明に近いのではないか、そんな気もします。
『カリオストロの城』が今なお愛される理由も、ここにあるのでしょう。完全な悪役ではなく、どこか空虚で、どこか人間臭い伯爵。そして彼を倒すルパンもまた、正義の味方というより、物語をよく理解した大人として描かれています。
詐欺師と被害者、その境界線が思ったほど明確ではない、その事実に気づいたとき、カリオストロの人生はただの詐欺師というよりも、「人間的だなあ」という印象を与えるものになるのではないでしょうか。

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