2026年1月24日(土)、岡山県立美術館で開催された「ミュージアムコンサート ~歴史からみる音楽と祈り~」。特別展の半券で無料入場というありがたさ。この催しは「美と祈り—近現代日本美術にみるキリスト教」という展覧会に付随して行われたもので、キリスト教と祈りというテーマを、音楽を通じて捉えるという意欲的なもの。
公式サイトによると、プログラムは
♪ビーバー「パッサカリア」(ヴァイオリン独奏)
♪バッハ「オーボエ・ダ・モーレ協奏曲」
♪バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」(ピアノ独奏)
♪ドヴォルザーク「ソナチネ」(ヴァイオリン、ピアノ)
♪野口雨情/中山晋平「シャボン玉とんだ」
♪仲村渠悠子「祈り・宮古島古謡“旅栄いぬあやぐ”より」
♪ハース「組曲」(オーボエ、ピアノ)
♪ペルト「鏡の中の鏡」(ヴァイオリン、ピアノ) 他
実際にはドヴォルザークの「おお神よ、わが願いを聞きたまえ」や山田耕筰の「赤とんぼ」なども演奏されました。
まずビーバーの「パッサカリア」が目を引きます。私が1ページ目で挫折した曲ですが、それはいいとしてバッハの「シャコンヌ」以前の無伴奏ヴァイオリン作品として際立った完成度を誇るものであり、その神秘性と難技巧が高度な次元で結びついた稀有な曲です。あまり知られていませんが、攻めた選曲であることがうかがわれます。ヴァイオリニストは仁熊美鈴さん。性格が出ているのでしょうか、柔らかな響きが特徴的です。あるいは、この演奏会のテーマである「祈り」にフォーカスした音作りをしたのでしょうか。私が持っていた「パッサカリア」のイメージを塗り替える好演奏でした。
バッハの「オーボエ・ダ・モーレ協奏曲」。オーボエは上月真子さん。こちらは輪郭のはっきりした音色でバッハ作品の特徴である堅牢さを示し、手堅くまとめたという感じ。続くピアノ独奏「主よ、人の望みの喜びよ」。中村渠悠子さんの演奏は透明感が見事でした。
「シャボン玉」「赤とんぼ」、これらの耳になじんだ曲であってもオーボエやヴァイオリンによって演奏されるとどことなく哀愁とか懐かしさといった感情が漂います。(「シャボン玉」の成立にあたっては秘められたエピソードがあることをこの日初めて知りました。)
また、ペルト「鏡の中の鏡」も特筆すべきでしょう。こういう作品があるということは知らなかったので事前に動画サイトで予習していきましたが、素晴らしい作品でしたので非常に期待していました。じつはペルトは1935年生まれで、いまも存命。ということは聴きやすい作品であっても「現代音楽」ということになります。鏡の中の鏡、ということは無限に像が写るということでしょうか。その中にいるのはもしかすると自分? そうかもしれませんし、違うかもしれません。ただ「祈り」をテーマとするコンサートの最後に、冒頭の「パッサカリア」に(たぶん)対置するものとしてプログラムに採用されたことは多くのものを示唆すると思います。音と沈黙の対話の中で、祈りが完結したかのようなひと時は、確かに音楽を聴いたのだという充実感を残しました。
コメント