上野の森美術館で開催中の「正倉院 THE SHOW」という展覧会。シルクロードの終着点である日本にははるか中東、中央アジア、中国、朝鮮を経て様々な宝物がたどり着いていました。そしてそれらが21世紀の現代にまで保存され、かつ研究・修復されているのは奇跡に近いと言っても過言ではないでしょう。そしてその精巧なレプリカや映像を中心に紹介されているのが今回の展覧会でした。

正倉院は奈良の東大寺にある宝物庫で、8世紀(奈良時代)に建てられました。そこから当時の日本がどんな国だったかを見ていくと、いくつかの特徴が浮かび上がります。当時は聖武天皇(在位724~749年)の時代で、律令(大宝律令や養老律令)に基づく政治体制が整えられていました。そして聖武天皇は「仏教によって国家を守る」という思想を強くもち、東大寺や国分寺の建立を進めたのです。

展示にも紹介されているとおり、東大寺の大仏(盧舎那仏)はその象徴で、正倉院はもともとこの大仏に関わる宝物を納めるための倉庫でした。仏教は単なる宗教ではなく、国を治めるための思想・権威の一部になっていたわけですね。

IMG_20250925_152040

しかし8世紀というと今から1200年以上昔のもの。にもかかわらず、これほどまでに技術レベルの高い宝物が作られているというのは目を見張るものがあります。数百年語にヨーロッパではチェンバロというピアノの先祖となる楽器が生み出されますが、こちらもきらびやかな装飾が施されている・・・のですが、この画像の琵琶も引けを取るものではありません。こればかりは私のブログではなく実際に上野の森美術館に行ってご覧いただくしかありません。


IMG_20250925_153106

そしてハイライトはやはり蘭奢待でしょう。「蘭奢待(らんじゃたい)」は、奈良の正倉院に今も収められている有名な香木です。「蘭奢待」という名は、漢字の中に「東大寺」の文字(蘭=東、奢=大、待=寺)を隠した当て字だと言われています。つまり「東大寺の宝」という意味合いがこめられているのです。織田信長が天下統一の権威を示すために切り取りを命じたことから、単なる香木というよりも、権力の象徴・正統性の証として扱われました。信長の切り取りは、まさに「自分こそ天下人である」と天下に示す政治的パフォーマンスだったわけですね。

その蘭奢待の香りが科学的に再現されており、実際に匂ってみることができます。
肝心の香りは・・・、なんと言ったらいいのでしょう、シナモンのような香りというか、いやもうちょっと言い換えると、大正製薬のパブロンゴールドA〈微粒〉の袋を開封したときの臭いを薄めた、とでも言えばいいのでしょうか・・・。松茸の香りはあまりかぐわしいと思えませんが、松茸だ、高級品だと思えばありがたみが出てくる。そんなもんかもしれません・・・。

そのほか、宝剣や帯の他、これらがどうやって保存・研究されているかを示すコーナーのほか、現代アーティストが正倉院の宝物に刺激を受けて製作した作品なども展示されており、たとえ古代日本に関心が薄くても一度は足を運ぶ価値のある展覧会になっていると言えるでしょう。できれば平日の昼に行くことをおすすめします。