「クエバ・デ・ラス・マノス(手の洞窟)」という洞窟が世の中にはあるようです。名前から察するにドラクエのダンジョンかと思いますが、違います。アルゼンチンに実在します。
アルゼンチン南部、広大なパタゴニアの大地に佇む「クエバ・デ・ラス・マノス(手の洞窟)」は、1万年近く前の人々の息遣いを今に伝える貴重な遺跡です。スペイン語で「手の洞窟」と呼ばれるこの場所は、1999年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。渓谷の絶壁に開いた洞窟の壁には、数百もの手形、動物、幾何学模様が鮮やかに残されています。その多くは左手で、輪郭が色で縁取られたネガティブ型。右手で顔料を吹きかけるため、左手を壁に当てたと考えられています。ということは1万年前からそういう表現にこだわる絵師(?)たちがいたということですね。
使われた色は赤、黒、白、黄などで、とりわけ赤系が多く見られます。顔料の原料は現地で採れる天然鉱物や土。赤や黄は酸化鉄、黒は二酸化マンガンや木炭、白はカオリナイト(白色粘土)です。これらを粉末にして、水や動物の脂、唾液などと混ぜ、吹き付けや塗布に適したペースト状にしました。顔料は非常に粒子が細かく、岩肌と化学的に結びつきやすいため、乾燥したパタゴニアの気候と相まって、数千年もの間鮮やかさを保っています。正直、私はアルゼンチンというとワインくらいしか興味がなかったのですが、ぶどう作りだけでなくそういう物の保存にも適していたようですね。
描画方法は大きく三つに分けられます。まずもっとも有名な手形ステンシルは、手を壁に押し当て、口や骨管で顔料を吹きかける方法です。次に、グアナコ(南米に生息するラクダ科動物)や狩猟する人物像は、指や骨製ブラシ、石の先などで直接描かれています。最後に、点描やジグザグ、渦巻きなどの幾何学模様は、単色や重ね塗りで壁を彩っています。
使われた色は赤、黒、白、黄などで、とりわけ赤系が多く見られます。顔料の原料は現地で採れる天然鉱物や土。赤や黄は酸化鉄、黒は二酸化マンガンや木炭、白はカオリナイト(白色粘土)です。これらを粉末にして、水や動物の脂、唾液などと混ぜ、吹き付けや塗布に適したペースト状にしました。顔料は非常に粒子が細かく、岩肌と化学的に結びつきやすいため、乾燥したパタゴニアの気候と相まって、数千年もの間鮮やかさを保っています。正直、私はアルゼンチンというとワインくらいしか興味がなかったのですが、ぶどう作りだけでなくそういう物の保存にも適していたようですね。
描画方法は大きく三つに分けられます。まずもっとも有名な手形ステンシルは、手を壁に押し当て、口や骨管で顔料を吹きかける方法です。次に、グアナコ(南米に生息するラクダ科動物)や狩猟する人物像は、指や骨製ブラシ、石の先などで直接描かれています。最後に、点描やジグザグ、渦巻きなどの幾何学模様は、単色や重ね塗りで壁を彩っています。

これらの壁画が描かれた年代は、放射性炭素年代測定により約9,000〜13,000年前と推定されています。複数の時期にわたり描き足された形跡があり、長い年月にわたって同じ場所が儀式や集会の場として使われていたことがわかります。では、なぜ手形や動物が描かれたのでしょうか。諸説ありますが、成人儀礼や集団の結束を示す「通過儀礼説」、狩猟の成功を願う「狩猟魔術説」、あるいは「この土地は自分たちの領域である」という意思表示など、いずれも人々の暮らしや精神文化と深く結びついていたと考えられます。(というか、古代のいわゆる「芸術」作品はどれもそんな感じですよね。)
現在、クエバ・デ・ラス・マノスは保護区として管理され、観光客はガイドツアーでのみ訪れることができます。リオ・ピントゥラス渓谷の絶景とともに、先史時代の芸術がそのままの姿で残る光景は、訪れる人に強い印象を与えます。数千年前の人々が残した色と形は、単なる絵ではなく、時を超えて語りかけるメッセージです。それは「ここに、私たちは確かに生きていた」という声であり、現代に生きる私たちに、表現することの意味と力を静かに教えてくれます。
参考文献
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