転職して新しい職場にやって来た私。ここではSAPというシステムが導入されていました。SAPとは、企業の経営資源（人・モノ・カネ・情報）を一元管理するドイツ発のERP（基幹業務システム）です。販売、在庫、会計、人事などの業務を統合し、効率化や情報の可視化を実現します。大企業を中心に世界中で導入されています。つまり単なる人事管理システムとか給与計算システムとか、販売管理システムといった一つの機能しか持っていないのではありません。そうではなくて、色々な業務が統合されてこれ一つあればOKということになります。

ということは、とても便利じゃありませんか。なんてオールマイティーな優れモノなんだ。そう思っていましたが全然違いました。実際使ってみてすごく使いづらいと思いました。レイアウトが謎。アイコンの図像が謎。おかしな方向に向いた矢印がダウンロードを意味するなんて、ちょっと信じられません。誰でしょうかこんなクソデザインにしたのは。

それ以外でも「普通こんなデザインにしないよね」と思うようなボタン配置になっています。Googleのすっきりした画面に比べると謎すぎます。SAPのせいでむしろ生産性がダウンする気がします。

さらに使っていて困るのが、操作手順の多さです。たとえば、たったひとつのデータを参照したいだけなのに、何回もクリックしなければならず、途中でコードの入力や不要と思える確認画面が次々と出てきます。「そこまで確認しないとダメなの？」と思うような場面ばかりで、直感的に動かせる感じがまったくありません。何をするにも、いちいちマニュアルを確認する必要があり、まるでRPGゲームの謎解きのような気分になります。業務を効率化するどころか、時間を浪費しているような感覚です。

また、エラーメッセージも非常にわかりにくいです。たとえば「エラーコード：FZ374」のような表示が出てきたとき、「それって何？」と思っても、説明は一切なく、ただエラーが出たということしかわかりません。初心者にとっては不親切極まりない設計です。Googleのように検索窓に「こうしたい」と自然文で打てば解決、というわけにはいかず、「トランザクションコード」や「モジュールの種類」といった専門用語がわからなければ、まったく前に進めません。

しかも、同じ業務を行っている他の部署と話していても、「うちは別のモジュール使ってるから画面違うよ」とか、「バージョンが違うから操作方法も違う」といった具合で、共通言語が成立しにくいという問題もあります。SAPは統合型といいつつ、実際にはカスタマイズされすぎていて、むしろバラバラになっている印象すら受けます。

なにより、これだけ巨大なシステムであるにもかかわらず、「ユーザーの使いやすさ」という視点がほとんど感じられません。おそらく開発側は、効率化や統合性ばかりに注目して設計したのでしょうが、実際にそれを日々使う現場の人間にとっては、「複雑すぎて意味がわからない」というのが正直な感想です。

便利なはずのSAP。しかしその真の姿は、「高機能ゆえの不便さ」という皮肉な現実を突きつけてきます。使いこなすには相当な訓練と忍耐が必要であり、「誰でも簡単に扱える」という世界からは、かなり遠いところにあると感じざるを得ません。

そして・・・、私はこれからこのクソフトを毎日使うことになるのでした。一体どうすればいいのか・・・。