大内孝夫さんの著作『音大崩壊』を読むと、多くの音楽大学は学生募集に苦労していることが書かれています。たしかに女子学生のキャリア志向が強まれば音楽大学よりも一般大学で学んで大手企業等に就職しようという人が増えます。当然音大志願者は減ります。そらそうよ。
それはともかくこの本の84~86ページ目には音大生のもつ能力として様々なものが挙げられていました。問題解決能力、克服力が高まる。また克服を繰り返すことで自己肯定感が高まり、演奏を工夫することで想像力が豊かになると書かれています。また、演奏中にトラブルがあった場合の対応としてBCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン)を立て、とっさに的確な判断ができるようになるとか。されには表現力も磨かれるし、毎日練習と向き合うことから時間を無駄に使わないというQOLに結びつく力が身につく、その他にも創造性、感受性、バランス感覚、マルチタスク力など、音大生は一般大学の学生に比べ優位と思われるスキルや性格を持つと考えられる、と書かれています。
「自分の会社にこのような新人がいたら、すごくないですか?」と著者は問いかけていますが、果たして本当にそうでしょうか? そんなスーパーマンみたいな奴っているんでしょうか?
実際のところ、著者が挙げているような能力をすべて兼ね備えた音大生が、果たしてどれほど存在するでしょうか。確かに音楽大学で学ぶ過程において、厳しい練習を積み重ねたり、本番のプレッシャーに打ち勝ったりする中で、一定の精神的なタフさや工夫する力が養われることはあるでしょう。しかし、それはあくまで「そういう傾向があるかもしれない」というレベルの話であって、全員が例外なくそうした能力を身につけているわけではありません。
そもそも、演奏家として自立するには技術や表現力の習得以上に、マーケティング力や営業力、人脈形成力といった“社会を生き抜く力”が不可欠です。しかし、音大のカリキュラムがそれを十分に育てるように設計されているとは言いがたいのが現実です。むしろ「技術の習得」が目的化され、日々の練習に追われてしまい、「自分はどう生きていくのか」「社会とどうつながるか」という視点を持てないまま卒業してしまうケースも少なくありません。
加えて、問題解決力やマルチタスク力、QOL向上力など、ビジネス用語的に並べられたキーワードには説得力があるように見えて、実際にはその定義があいまいです。「演奏に工夫を加えること」と「業務改善の提案ができること」がどれほど結びついているのかは検証が必要ですし、「演奏中のトラブル対応」が「BCP的判断」とイコールで語られるのもやや飛躍があります。
つまり、著者の語る理想像は、音大生の持ちうる「可能性」を拡大解釈したものであり、現実にはそこまでのスーパーマン的スキルセットを持つ学生は稀です。たとえるなら、甲子園に出場する野球部員が全員プロで通用するわけではないのと同様、音大を出たからといって、全員がビジネス界で即戦力となる「隠れた逸材」であるとは限りません。
もちろん、音楽を通じて得た経験は他分野にも応用可能であり、そこに価値があることは否定しません。ただし、それを強調するあまり、現実の就職市場や学生本人の志向、そして社会との接点の少なさといった課題が見過ごされてしまうと、結局は「絵に描いた理想像」だけが空回りすることになりかねません。音大生が持つ可能性を過信するよりも、現実の課題と向き合いながら、その強みをどう社会で生かすかを考える方が、よほど建設的ではないでしょうか。というわけで上記の主張は具体例の例示もなく、私としては賛同しかねるのでした。
そもそも、演奏家として自立するには技術や表現力の習得以上に、マーケティング力や営業力、人脈形成力といった“社会を生き抜く力”が不可欠です。しかし、音大のカリキュラムがそれを十分に育てるように設計されているとは言いがたいのが現実です。むしろ「技術の習得」が目的化され、日々の練習に追われてしまい、「自分はどう生きていくのか」「社会とどうつながるか」という視点を持てないまま卒業してしまうケースも少なくありません。
加えて、問題解決力やマルチタスク力、QOL向上力など、ビジネス用語的に並べられたキーワードには説得力があるように見えて、実際にはその定義があいまいです。「演奏に工夫を加えること」と「業務改善の提案ができること」がどれほど結びついているのかは検証が必要ですし、「演奏中のトラブル対応」が「BCP的判断」とイコールで語られるのもやや飛躍があります。
つまり、著者の語る理想像は、音大生の持ちうる「可能性」を拡大解釈したものであり、現実にはそこまでのスーパーマン的スキルセットを持つ学生は稀です。たとえるなら、甲子園に出場する野球部員が全員プロで通用するわけではないのと同様、音大を出たからといって、全員がビジネス界で即戦力となる「隠れた逸材」であるとは限りません。
もちろん、音楽を通じて得た経験は他分野にも応用可能であり、そこに価値があることは否定しません。ただし、それを強調するあまり、現実の就職市場や学生本人の志向、そして社会との接点の少なさといった課題が見過ごされてしまうと、結局は「絵に描いた理想像」だけが空回りすることになりかねません。音大生が持つ可能性を過信するよりも、現実の課題と向き合いながら、その強みをどう社会で生かすかを考える方が、よほど建設的ではないでしょうか。というわけで上記の主張は具体例の例示もなく、私としては賛同しかねるのでした。
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