国立西洋美術館で開催中の「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」。素描について注目する人もかなり少ないでしょう。私もほとんど気にしたことがありませんでした。しかしまとまって素描が観られて詳しく慣れるよい機会だと思って足を運んでみました。
このような作品がずらりと展示されています。じつに細かい。作品リストを見ていると17世紀の作品などもあります。それが今の時代にまで守り伝えられているということ自体、称賛すべきことですね。私が訪れたときには、静かな展示室に鉛筆やチョーク、インクなどで描かれた線のひとつひとつが、まるで話しかけてくるように感じられました。油彩画のような派手さはありませんが、むしろその簡素さゆえに、描き手の意図や息づかいがダイレクトに伝わってくるのです。
全体を通して思ったのは、「素描は絵画の影」ではなく、「絵画の原点」なのだということです。完成された作品の裏側にある、数えきれない試行錯誤やひらめきの瞬間、それらがこの展覧会には詰まっています。作品数は約80点にも及び、ただ眺めるだけでも1〜2時間はあっという間に過ぎます。西洋美術史における素描の多様性と奥深さを、まさに体感できる展示です。
個人的にはネーデルラントの作品群が興味深かったです。なにしろオランダ、ベルギーは最近訪れたばかり。興味がないわけないでしょう。面白いのが「眠る犬」。これはかわいい。単純にかわいい。物販エリアでグッズ化されていました。まさか数百年後に自分が極東の島国で勝手にグッズ化されているなんて犬も夢にも思わなかったことでしょう。
「1645年の火災後のアムステルダムの新教会内観」もやはり面白い。面白いというか、「当時はそうだったんだ」という気にさせられます。アムステルダムの新教会は、王宮とダム広場のすぐ近くにあり、王室の結婚式と戴冠式が行われる場所です。というわけでアムステルダムを訪れると、必ず視界に入ってくる建築物です。そうそう、こんな感じだった、そういう思いが胸の中に湧き上がってきます。
「軍艦とオランダの釣り船」。オランダの風景画には、なんだか侘しげな港の様子が描かれているものが多数あります。なぜか色調は判で押したようにセピア色っぽいものばかり。そういう決まり事でもあるのでしょうか? これもオランダの美術館に行くと山ほど見ることになるはずです。その光景がやはり頭の中に蘇ってきます。
国立西洋美術館という会場も、この展覧会にはぴったりだと感じました。ル・コルビュジエによる建築空間のなかで、静かに佇むように展示された素描たちは、まるで時を超えて語りかけてくるかのようです。作品と対話するようにじっくりと鑑賞するひとときは、美術館でしか得られない贅沢な時間でした。派手な演出や映像展示に頼らず、「線の美」に正面から向き合った本展は、芸術に対する感性を研ぎ澄ませてくれる貴重な機会です。素描に少しでも関心がある方は、ぜひ足を運んでみてください。

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