オランダといえばアムステルダムが真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、「ハーグ」も見逃せない都市のひとつです。オランダ南西部に位置するこの街は、政治の中心地でありながら、豊かな歴史や芸術、そして海辺のリゾート地としての顔も持っています。今回はそんなハーグの見どころを、実際に訪れて感じた魅力とともに書き留めておきたいと思います。

まずハーグの中心地にあるのがビネンホフです。これは13世紀から続く中世の建物群で、オランダの国会議事堂として今も使われています。重厚なゴシック建築に囲まれた広場は、まさに「ヨーロッパの政治の舞台」といった趣。ビネンホフのなかには、「騎士の館」という大広間があり、国王が毎年9月の国会開会式で演説を行う場所としても知られています。周囲には池(ホフ池)もあり、水面に映る歴史的建造物が絵画のような風景を作り出しています。(しかし私が行ったときは改修工事中でした)

そして芸術ファンなら見逃せないのが、「ウリッツハイス美術館です。ここにはフェルメールの名画『真珠の耳飾りの少女』や、レンブラントの『テュルプ博士の解剖学講義』など、17世紀オランダ黄金時代の傑作がずらりと並びます。館内はこぢんまりとしていながらも洗練された空間で、静かに名画と向き合うことができます。アムステルダムの国立美術館に比べて混雑も少ないので、落ち着いた時間を過ごしたい方には特におすすめです。というか、『真珠の耳飾りの少女』の真価というのは実物を見て初めてわかります。黒い空間を背景に佇む少女。その瞳、唇に光があたる様子を見事に捉えています。こんな作品、世界に2つとありません!

一方、ハーグには美術館以外にもユニークな観光スポットがあります。その代表が「エッシャー美術館」です。トリックアートや視覚の錯覚を用いた版画で有名なマウリッツ・エッシャーの作品を集めた美術館で、かつては王族の宮殿だった建物を利用しています。エッシャー独特の“無限”の世界に入り込んだかのような体験ができるこの場所は、大人から子どもまで楽しめる不思議な空間です。・・・しかしミュージアムイヤーリーカードの対象外です。私は開口一番、受付で「そのカードは使えません」と一瞬で否定されてしまいました。

また、ハーグは北海に面しており、トラムで15分ほど行けばスヘフェニンゲンというビーチリゾートにたどり着きます。北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』では「スケベニンゲン」と記され、「この地名は日本語でそのまま使えるのでみんな喜んでいた」と書かれていました。ここには砂浜や桟橋、観覧車、レストランなどが並び、夏には地元の人々や観光客で大変にぎわいます。都市観光とリゾート気分の両方を味わえるのは、ハーグならではの魅力と言えるでしょう。・・・正直、お台場みたいなところです。繰り返しますがお台場みたいなところです。無理して行く必要はありません。

さらに、ハーグには国際司法裁判所や国際刑事裁判所といった、国際機関も多数集まっており、「国際法の都」とも呼ばれています。平和宮(はその象徴で、美しい庭園に囲まれた宮殿のような建物が印象的です。一般公開もされており、世界平和への祈りがこめられた展示を見ることができます。

このようにハーグは、歴史、芸術、政治、そして海辺のリゾートという多彩な顔を持つ都市です。アムステルダムの喧騒から少し離れて、ゆったりとした時の流れを感じながら、オランダの別の一面を味わってみるのも良いのではないでしょうか。

ヨーロッパ旅行を計画中の方は、ぜひハーグを旅程に加えてみてください。たぶん、フェルメールを見られるというこの一点において、きっと後悔はないはずです。