タイトルからして悪口かよ、と思うかもしれませんが、しかしこれは事実です。ルーベンスのコレクションは見事なのはもう明らか。これは素晴らしい。ルーベンスばかり見ているとちょっと食傷気味になってしまうかもしれませんが、これだけまとまった量のルーベンス作品を見ることも一生のうちに二度とないでしょうからまあ許せます。

しかし入場料20EUR。これは高い。まあほかの教会とか美術館もそれくらいの価格なのでこれはまだわかります。それと、昨日までオランダにいた私は、この建物の室内の装飾が一気にゴージャスになったことに気づき、これがベルギーなんだと実感しました。町は落書きがところどころにあってパリみたいなちょい汚い割に(オランダはそんなことなかった)、重要なところは豪華だなんて一体・・・。

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それはともかく、この美術館は夏に訪れるとエアコンが日本人にとっては強く効いているので、なにか羽織るものを持って行ったほうがよいでしょう。それと、上の階に移動するときに階段を使ってはいけません。1フロアの天井が高いので、ようするに何段も階段を上るはめになるということです。

さて、このアントワープ王立美術館、ルーベンス以外に何があるのかというと、これがまたなかなか侮れないのです。まずフランドル絵画の流れを感じられる作品が多数。そして何より、近現代のコレクションが非常に充実しています。私の予想に反して、さらには現代美術のセクションまでしっかりスペースが確保されていて、ルーベンスだけで終わらない多様性を感じました。

特にアンソールは、同じベルギー出身ということもあってか非常に厚遇されています。奇妙でユーモラスな仮面の群像画など、印象的な作品が何点もありました。パリのオルセーやオランジュリーを見慣れている方には、また少し違ったヨーロッパ美術の一面を発見できるのではないでしょうか。それとデルヴォーの作品があるのも興味深いですね。

展示の導線もよく練られていて、迷子にはなりにくい作りです。建物自体が新しくリノベーションされたばかりらしく、天井の高い空間に自然光がやわらかく差し込む設計はとても快適。私は22年前に一度訪れているはずなのですが、記憶がほとんどありません・・・。ということは印象に残らない体験だったということでしょうか? 床が一部ギシギシ鳴る場所があって、「おや、これも演出?」と一瞬思ってしまいました。違うと思うが。

ミュージアムショップは期待していたほどではなかったですが、ルーベンスグッズの品揃えはそこそこ。カフェも併設されていて、天井が高く開放感があります。しかし日本人の感覚からすればぼったくり価格です。

総じて言えば、「ルーベンスを観に行くつもりが、他の作品にも思わず見入ってしまった」というタイプの美術館です。展示のバランスがよく、ただの「巨匠推し」だけに終わらない懐の深さがありました。アントワープ観光のついでではなく、ここを目的にして訪れるのも充分アリです。しかしエアコン対策は必要です。それと階段は辛かった。松本城ほどではなかったですが。