デン・ハーグにある美術館、マウリッツハイス。ここにはフェルメールの「デルフトの眺望」そして「真珠の耳飾りの少女」が展示されています。この作品がよその美術館に貸し出されることは想像しづらいですね。ということはこの作品が見たければここに来い、ということになります。


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私がここを訪れたのは2003年のこと。そのときは美術館はミュージアムなんとかカードというものを学生割引で購入した(10EURくらい?)らあとはオランダほぼすべての美術館に入り放題という破格なもの。

しかし2025年に改めてこの国を訪問すると状況は一変していました。物価が高い! というか円安が辛い、日本経済が成長していない、世界経済から取り残されつつある、というのを実感する旅になってしまいました。

2025年にもミュージアムカードは販売されていますが75EURという高額なものに。しかも海外の観光客は5か所までしか入場できないという規制がかかっています。また、22年前は10EURくらい(1200円くらい)でレストランでピザ+ビールくらいは食べられたのに、今では25EURくらい(4000円くらい)です。出せないわけではないし、学生時代よりも今のほうがはるかにお金を持っています。でもピザとビールに4000円出してみたいですか? 私は嫌です。

ヨーロッパ旅行は、平均的な日本人にとってますます難しいものになりつつあると感じました。もちろん飛行機に乗れば来ることはできますし、入国審査で止められるようなこともありません。でも、「ふらっと来て、ふらっと名画を眺めて、ふらっと食事をして帰る」といった旅は、もはや夢のようなお話かもしれません。特に今の円安の状況では、「ちょっと寄り道」をするだけで、数千円、場合によっては1万円近い出費になってしまいます。

今回、オランダのカフェでカプチーノを一杯注文したところ、4.5ユーロでした。日本円に換算するとおよそ750円です。2003年当時の私であれば、この金額でサンドイッチとコーヒー、さらにデザートまでつけることができました。いや言い過ぎか。でも高い、というのを痛感することはなかったです。当時もヨーロッパは「なんだか微妙に物価が高い」という印象がありましたが、それでも円の価値がそれをカバーしてくれていたのです。しかし、現在はそうはいきません。ホテル代も、鉄道代も、美術館の入場料も、すべてが「ヨーロッパ基準」で上がり続け、日本だけがその流れから取り残されているように感じられます。

22年前、マウリッツハイス美術館の前で記念写真を撮りました。初めて目にしたフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」は、信じられないほど静かで、どこか儚げでありながら、まっすぐにこちらを見つめていました。2025年の今も、彼女の視線は変わりません。展示の位置も、照明も、当時とほとんど同じように感じられました。

変わったのは、周囲の風景と、そして私自身です。学生だった私は、身軽で、何も持っていませんでしたし、持っていないことを恐れることもありませんでした。今の私は、背負っているものが多く、あの頃の身軽さを少しうらやましく感じてしまいます。物価も、社会も、そして自分自身も、確実に時を経て変わってしまったのです。

「真珠の耳飾りの少女」は、ただそこにいるだけなのに、不思議と多くのことを考えさせてくれます。彼女は昔のままですが、私はもう昔の私ではありません。

それでも──やはり、ここを再び訪れてよかったと心から思います。それと、たぶんもうここには来られないだろうな・・・。さようなら「真珠の耳飾りの少女」よ。


また来るかもしれんけど。