仕事をしていると心ならずもマルチタスクになることがあります。マルチタスクとは、複数の目標を同時に達成するために、複数のタスクを同時に実行することです。本当は分身の術を使えればいいのですがそうもいきません。結局マルチタスクになります。

しかし注意力を要する複数のタスクを同時に実施することは、頭にも体にも負担がかかります。前後のタスクをごちゃごちゃにしない判断力が求められます。

しかし、マルチタスクって本当に可能なんでしょうか？ 2015年にはフランスのMRI検査センターNeuroSpinはこんな研究を発表しました。流れる12個の文字から特定の文字を選ぶ課題と、音の高低音を聴き分ける課題を並行して、なるべく早く行ってもらいます。しかし参加者の脳の様子を計測すると、実験開始後わずか0.5秒で、文字を選ぶプロセスと聞き分けるプロセスのどちらかが必ず遅れ始めたのでした。

研究チームは、「人間はどんなに頭がよくても、一度に複数のタスクに集中できない」と結論づけています。

また、認知神経科学者デイビッド・E・マイヤーによると、マルチタスクにより人の生産性は40％ダウンするそうです。結局のところ、一番成果が上がるのはシングルタスクのようですね。

タスクに集中して取り組んでいると、突然別のタスクの連絡が入り、中断せざるを得なくなることはよくあります。そして、中断したタスクに戻ろうとすると、どこまでやったか忘れてしまい、集中力も途切れてしまう。これはまさに「スイッチングコスト」と呼ばれる現象です。タスクを切り替えるたびに、脳は新たなタスクに順応し、前のタスクの情報を整理し直す必要があるため、余計なエネルギーを消費してしまうのです。

前述の研究結果が示すように、人間は複数のことに同時に注意を向けるようにはできていません。脳は、注意の焦点を瞬時に切り替えているだけであり、実際に同時に処理しているわけではないのです。この切り替えによって生じるのが、以下の問題です。

すなわち、集中力の低下、ミスの増加、ストレスの増大、時間の浪費。嫌だな・・・。

これに対し、一つのタスクに集中して取り組むシングルタスクは、生産性を高める上で非常に効果的です。何が起こるかというと、上記の逆ですね。集中力UP,ミスDOWN、ストレス減る、時間の節約。これはいいですね。

しかし、現代の仕事環境で完全にマルチタスクを避けるのは難しいのも現実です。そこで、以下のような工夫をすることで、マルチタスクの悪影響を最小限に抑え、シングルタスクに近い集中力を保つことができます。

私たちは分身の術を使えませんが、脳の仕組みを理解し、意識的にタスクへの取り組み方を変えることで、マルチタスクの渦中でも高い生産性を維持することは可能です。シングルタスクの時間を増やし、脳に優しい働き方を心がけることが、結果としてより良い成果と心のゆとりをもたらすのではないでしょうか。