「忙しいときほど、なぜか物事がサクサク進む」と感じたことはありませんか? 一見、時間に追われて余裕がない状況のように思えますが、むしろそうしたときこそ集中力が高まり、成果が上がるという不思議な現象があります。逆に、時間があるときほど余計なことに手を出してしまったり、成果物のクオリティが低かったりします。不思議なものです。この現象を説明するヒントとなるのが「パーキンソンの法則」です。

パーキンソンの法則とは、1955年に英国の歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが提唱したもので、「仕事は、与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する」という法則です。たとえば、1時間で終わるはずの作業も、3時間与えられると3時間かけてしまう。逆に、30分しかなければ、何とかして30分で終わらせようとする。つまり、人は時間がたっぷりあると、その余白に甘えてしまう傾向があるのです。

この法則を日常に当てはめてみると、たとえば仕事が少なく時間に余裕がある日は、ついSNSを見たり、資料をじっくり読みすぎたりして、なかなか作業が進まないことがあります。一方で、複数のタスクに追われている日には、「この会議の前にこれを終わらせなければ」といった時間的制約が自然と生まれ、集中して取り組むことができます。タスクに締め切りがあることで、集中力と判断力が研ぎ澄まされ、無駄な動きや思考が排除されるのです。

また、忙しい状態では「今、何をすべきか」という優先順位を常に意識せざるを得なくなります。これは結果として、タイムマネジメント能力やタスク処理能力の向上につながります。忙しいからこそ、無駄な会議を断ったり、完璧を求めすぎずに「まず終わらせる」意識が生まれたりすることも多いのです。

もちろん、過度な忙しさが続くとストレスや体調不良につながるため、常にフル稼働がよいというわけではありません。しかし、「適度な忙しさ」はむしろ脳のリソースを効率よく使わせ、集中力を高める起爆剤になるのです。

忙しいときにこそ、人は本領を発揮しやすい。これは単なる根性論ではなく、心理的・行動経済学的にも裏付けられた考え方です。もし「最近、なんだか集中できない」と感じているなら、あえてスケジュールを少し詰めてみたり、自己設定の締め切りを設けてみたりするのも一つの手かもしれません。

パーキンソンの法則をうまく活用すれば、忙しさは敵ではなく、むしろ味方になります。自分で締め切りを作ったり、タイマーを活用して作業時間に制限を設けたりすることで、集中力を意識的に引き出すことができます。また、1日のスケジュールにあえて“区切り”を作ることで、時間に対する緊張感が生まれ、効率的にタスクを進められるようになります。忙しさをうまくデザインすることは、自己管理能力を高め、より充実した毎日を生きるための強力な武器となるのです。自分の時間の使い方を見直し、「忙しさを味方にする」ライフスタイルを、ぜひ実践してみてください。

ちなみに過去記事
仕事中に話しかけてくる。これがすごく邪魔である
で紹介したように、集中してるときに話しかけられて、テンションが下がってしまうのは大敵としか言いようがありません。イギリスの詩人コールリッジはそれがもとで「クブラ・カーン」という、英語で書かれた詩のなかでも最も美しいと言われる作品を書き始めたものの、未完に終わってしまいました。なんつー歴史的損失・・・!