ラウル・デュフィ。といってもまあそこまで知名度は高くないですよね。ラウル・デュフィは、20世紀前半に活躍したフランスの画家であり、装飾芸術家としても知られています。その作品には一貫して「軽やかさ」や「明るさ」があり、見ている人の心を和ませるような魅力があります。彼の作品の特徴を知ることで、より深くその世界に触れることができるでしょう。

まず注目したいのは、色彩の使い方です。デュフィの絵画は、鮮やかで自由な色使いが印象的です。彼はフォーヴィスム(野獣派)の影響を強く受けており、現実の色にとらわれない表現を追求しました。例えば、海が赤や緑で描かれていたり、木々が青く表現されていたりと、常識にとらわれない大胆な配色が見られます。この自由な色彩表現が、デュフィ独特の軽快さや喜びを生み出しています。

次に挙げられるのが、線の使い方です。デュフィは、鮮やかな背景色の上に軽やかな輪郭線を描く手法を多用しました。彼の線描はスケッチのように簡潔で、動きのあるリズムを感じさせます。この線は決して厳密な写実を目指したものではなく、むしろ物のエッセンスをとらえて表現するためのものでした。そのため、彼の絵には「音楽的」とも評される躍動感が漂っています。こういう作風が広く受け入れられるようになったあたり、私は「うーん20世紀なんだなあ」などと無意味にしみじみしてしまいます。

デュフィの作品テーマもまた、彼の個性を語るうえで欠かせません。彼はしばしば海辺の風景、ヨット、音楽、花、市場、馬術競技など、明るく華やかなモチーフを好んで描きました。そこには悲しみや苦悩といった感情よりも、日常の楽しさや自然の美しさへの賛美が表現されています。

また、デュフィはテキスタイル・デザインや舞台装飾、陶芸など、多岐にわたるジャンルでも活躍しました。絵画の枠を超え、生活空間に美をもたらすことを目指したその姿勢は、アール・デコの潮流とも共鳴しており、彼の総合芸術的な才能を感じさせます。

ラウル・デュフィの作品は、色と線の詩的なハーモニーによって、人々に「見る楽しさ」を提供し続けています。日々の喧騒から少し離れて、彼の描く世界に浸ることで、心が明るくなるような感覚を味わうことができるでしょう。芸術が人に与える癒やしと喜びを、彼ほど軽やかに体現した画家はそう多くはありません。(人によっては「なんだかチャッチャッと仕上げたような画風だなあ」と思ってしまうかもしれませんが。)

これまた「どこの美術館で作品が見られるんだ?」ということになりますが、たとえば東京駅ほとりのアーティゾン美術館、八王子のかなり奥にある東京富士美術館、そのほか旅行のついでに立ち寄る、ということであれば諏訪湖の湖畔に佇むサンリツ服部美術館などが挙げられます。わりと特徴的な作風なので、一度見てしまえば、その後は「あ、これもデュフィだね」と一発で分かるようになるはずです。まあ、分かったからといって金持ちになれるわけでも出世できるわけでもありませんけどね・・・。