株価が大きく下落すると、つみたて投資をしている人の多くが不安になります。たとえば最近などは米トランプ大統領の発言の影響で株価が乱高下しています。乱下と言ったほうが正確かもしれませんが・・・。

そうなってくると、「今すぐ売った方がいいのでは?」「積立を止めた方が損しないのでは?」といった考えが頭をよぎることもあるでしょう。しかし、長期的な資産形成を目的としているのであれば、株価が急落しても積立投信は継続するのがよいです。

ではなぜ、株価が下がっているときにも積立を続けた方がよいのでしょうか?その理由は、株価が下がると「安く買える」からです。積立投信の最大のメリットのひとつは、「ドルコスト平均法」という買い方にあります。これは、定期的に3万とか5万とか、一定額を投資することで、価格が高いときには少しだけ、価格が安いときには多く買うという仕組みです。株価が急落したときは、「たくさん買える」チャンスなのです。安いときに多く購入できれば、平均取得単価が下がります。そして将来的に価格が回復すれば、結果的により大きな利益につながります。いわば、株価が下がっているときはトヨタとかアップルとかの株式を普段よりも安く仕入れることができる、「セール期間」と考えることもできるのです。

ただ、株価が下がっているときに買うというのは人間の心理に反する作業であり、なかなか踏み切れることではありません。「今は危ないから売っておこう。落ち着いたらまた始めよう」と考える方もいますが、市場がいつ上昇に転じるかを正確に予測するのは・・・無理です。だれもできません。そんなののがわかる人がいたら大富豪が大量に生まれています。むしろ、大抵の人は「売ってしまったあとに市場が反発してしまい、乗り遅れてしまった」という経験をしています。要するに積立投資は、マーケットの短期的な乱高下を考慮せず、機械的にコツコツと資産を積み上げていく手法です。短期的な上げ下げに一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。

この機械的な積立というのがいいポイントだと私は思っています。株価が下がると、不安から焦って行動してしまうことがあります。しかし、積立を続けると「定期的に投資をする」というルール(というか、一旦積立額を決定したら、あとは放置)に従って行動できるため、感情に振り回されにくくなります。

投資において「冷静さ」はとても大切です。積立投信は、感情による判断ミスを防ぎ、長期的な成果につなげるための有効な手段です。三田紀房先生の『インベスターZ』っていう投資漫画にもそういう登場人物がいましたが、やっぱり彼が投資の能力が抜きん出ていました。

過去の市場データを見ても、リーマンショックやコロナショックなどの大幅な下落があっても、長期的に見れば多くの市場は回復し、成長しています。一時的な下落に目を奪われて投資を止めてしまうと、その回復による利益のチャンスを逃してしまいがちです。

特に、まだ20代、30代という方にとっては、10年、20年という長いスパンで投資を継続することが大切です。

株価が急落すると不安になるのは自然なことです。しかし、積立投信は下落時にも続けることで、むしろ将来の利益のチャンスを広げることができます。市場の動きを短期で予測するのは難しく、感情に流されて売買を繰り返すよりも、ルールに従ってコツコツと積み立てていくほうが、長期的な資産形成には効果的です。

・・・以上のお話は、もう15年くらい昔のこと、当時セゾン投信の社長だった中野晴啓さんの講演会で直接教わったことを記憶を頼りにそのままコロナのことなどを織り込んで書き直したものです。私自身も2007年からセゾン投信を続けており、リーマンショックのときもコロナショックのときもまさにそうでした。機械的に淡々と積み立てて行くことで長期的には大きなメリットを享受できています。

ただ・・・、あまりに投信での資産が多くなりすぎると・・・、給与賞与よりも市場の動向のほうが資産に与える影響が大きくなって、労働収入の重要性が薄れてくるので真剣に働いてやろうという意欲がすごく削がれるんですよね・・・。これは15年前の自分もさすがに見抜けませんでした。