とある休日、ショッピングモールのカフェ。座れるだけでもラッキー。そう思ってまず座席を確保して注文の行列に並びます。しかし行列が進まない。一体何が?? そこで人の動きを観察してみると、どうやらレジがボトルネックになっているようです。レジでアプリ支払いをするせいで現金払いよりも余計に精算に時間がかかっているみたいですね。なんてこった、便利技術のはずが、そのせいで逆に手間ひまがかかるなんて、逆だろ・・・。

テクノロジーは私たちの生活を便利にしてくれるもの、というのがまあごく普通の認識だと思います。スマートフォンやインターネット、そして最近ではキャッシュレス決済の普及によって、買い物やサービスの支払いがスムーズに行えるようになったと言われていますね。ところが、その「便利さ」が、実際にはかえって不便さを招いている場面も少なくない、というのが最近の私の見立てです。

特に気になるのが、冒頭の私・・・というか前方のお客さんのようにレジでのアプリ支払いに時間がかかってしまうという現象です。アプリ支払いは一見すると、財布から現金を取り出す手間もなく、スマートに支払いを済ませられるように思えます。しかし、現場でよく見かけるのは、スマホを操作しながらあちこち画面を切り替える様子です。アプリを立ち上げるのに時間がかかる、QRコードがなかなか表示されない、意表を突いてログインが必要になってしまう(知らぬ間に勝手にログアウトしていた)、電波が悪い。・・・こうした小さなトラブルが積み重なり、結局、千円札を取り出したほうが早い、ということが起こり得ます。

特に年配の方や、アプリの操作に慣れていない人にとっては、こうした「スマホ操作そのもの」がハードルとなり、後ろに並んでいる人たちにプレッシャーを感じながら、あたふたしてしまうケースもあります。本人にとっても、周囲にとっても、ストレスになりますね。そもそもよく分かっていないツールをよく分かりもしないまま使おうとしている時点で失敗することが確定しているわけですが。

そのうえ、お店とかアプリによってはポイントを貯めるための追加操作や、クーポンの選択などが必要になる場合もあります。「せっかくの割引を逃したくない」という気持ちは誰しも持っているものですが、その分だけなおさら操作が増え、結果的に精算がスムーズに進まない原因となってしまいます。

現金支払いは、ある意味でとてもシンプルです。財布を開けて、お金を差し出す。そしてお釣りを受け取る。それだけのことに、余計な確認は不要。電波すら必要ありません。もちろん、釣り銭のやりとりや、硬貨の出し入れに時間がかかるケースもありますが、それでも最近ではセルフレジや自動釣銭機の導入により、その手間もかなり軽減されているのが実情です。

つまり、「テクノロジーが進歩したからといって、必ずしもそれがスムーズな体験に直結するわけではない」ということです。アプリ決済の便利さは確かにありますが、それが本当に便利になって自分にも、周囲の人にもメリットをもたらすのは「操作に慣れており、通信環境も良好で、アプリ自体も軽快に動作する」という恵まれた条件が整っているときだけです。でも現実には、そうした理想的な状況が常に揃っているとは限りませんよね・・・。

とすると色んな人が集まるお店ではむやみにアプリ支払いをしようとすると時間ばかりが流れてしまい、誰も得をしないという結末になりがちです。一体何のためのテクノロジーなのか・・・。