ベッポじいさんは、ミヒャエル・エンデの小説『モモ』に登場する道路の掃除人であり、物語の序盤から登場します。じつはこのじいさん、かなりの仕事人なのです。彼の仕事のやり方の良い点を挙げ、それがなぜ良いのかを考えてみました。
じいさんはこう語ります。
とっても長い道路を受け持つことがよくあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。こういうやりかたは、いかんのだ。いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん。わかるかな? つぎの一歩のことだけ、次のひと呼吸のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。(『モモ』より)
こ仕事のやり方の良い点の一つは、「目の前のことに集中する」ことにあります。長い道を掃除する際、道全体の長さや終わりを考えず、ただ「一歩」を意識する。この姿勢は、どんなに大きな課題でも、一つ一つの作業に集中することで着実に進めることができるということを示しています。デカルトは「困難は分割せよ」と言いました。それと同じですね。私たちの日常生活や仕事でも、目の前の作業に集中し、地道に取り組むことで、無駄な焦りを避け、やがてゴールに到達できるはずです。
さらに言うなれば、「丁寧に取り組む」ことも見逃せないでしょう。ベッポじいさんは、決して急いで作業を終わらせようとはしていません。つまりクオリティ重視! しかもメンタルヘルスの安定にもつながるというおまけつき。一つの仕事にじっくりと取り組むことで、より満足のいく成果を得ることができるというもの。こりゃ職人だ!!
なおかつ「継続することの大切さ」を身につけている点も素晴らしいですね。道路は毎日人が通れば汚れるものですから、結局毎日同じ作業を繰り返すわけが、それを苦痛とは思わず、むしろ自然な流れの一部として受け入れている様子がうかがわれます(私なら絶対嫌)。この考え方は、私たちが習慣を身につけたり、長期的な目標を達成したりするためには必須でしょう。例えば、ヴァイオリンの練習は毎日の積み重ねがなければ絶対に弾きこなすことができない楽器です(辛い)。
ベッポじいさんの語り口からは、心の穏やかさがにじみ出ているようでもあります。仕事をする際に余計な不安や焦りを抱えず、淡々と作業を進めているのでしょう。この姿勢は、Googleなんちゃらのような便利ツールが普及すればするほどかえって忙しくなるという皮肉な現代において特に重要ですし(だから『モモ』が不朽の名作なんですよ)、プレッシャーに悩む人々にとって参考になるはずです。彼のように落ち着いて仕事に向き合うことで、精神的な安定を保ちながら、クオリティを上げていくわけですね。これらの姿勢は、どんな仕事や生活の場面においても役立ち、より充実した人生を送るためのヒントとなるはずです。ビバじいさん!
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