世界史の授業を履修すると、ラスコーとアルタミラの洞窟壁画の話が最初のほうに出てきます。
どっちがどっちなのか混乱しがちです。一応、「フラスコ」と覚えるのがいいとか。フランスのラスコー、略してフラスコ。化学実験で使うあのフラスコに絡めて覚えます。

そのフランスのドルドーニュ地方にあるラスコー洞窟は、約1万7000年前のクロマニョン人によって描かれた壁画で世界的に有名です。しかし、洞窟内の環境保護のため、現在は一般の立ち入りが禁止されています。1963年に文化大臣だったアンドレ・マルローは、人間の体温や呼吸、空調や明かりが壁画を劣化させてしまうことから一般公開を禁止したのです。現在も保存活動が続けられており、本物のラスコー洞窟に足を踏み入れることはできません。でも実は、ラスコーには高度な技術で再現されたレプリカがいまでは3種類存在し、ほぼ本物と同じ体験ができるのです。しかし洞窟壁画のレプリカってすごいな。

ラスコー洞窟の壁画は一般公開されていませんが、現在では3種類のレプリカを通じてその芸術を鑑賞できます。
一つ目は「ラスコーⅡ」。1983年にオリジナルの洞窟の近くに作られた最初のレプリカです。洞窟内の「雄牛の広間」や「側廊」といった主要な部分を精密に再現し、壁画の色や質感も忠実に復元されています。ラスコーⅡは観光客に人気があり、本物の雰囲気を味わうには最適な場所です。

さらに! 「ラスコーⅢ」は移動展示として世界各地を巡回するレプリカです。壁画の一部をパネルとして再現し、デジタル技術を活用した展示も行われています。これにより、フランスに行かずともラスコーの芸術を体験できる機会が提供されています。洞窟壁画が世界を巡回するってどういうこった。まあ見せてくれるだけでもありがたく思え、ということでしょうか。

移動するだけでも驚きですが、2016年にモンティニャックに開設された国際洞窟美術センターにある最新のレプリカが「ラスコーⅣ」です。洞窟全体を3Dスキャンし、最先端技術を用いて忠実に再現しています。さらに、VRやプロジェクションマッピングを活用した体験型展示もあり、ラスコー壁画の世界をより深く楽しむことができます。そこまでするか!

ちなみにラスコー洞窟壁画というのは、現地の少年たちによって1940年に発見されました。穴に落ちた犬を探すうちに地下に通路があることが分かったのです。そのことを知った考古学者アンリ・ブレイユが調査を行い、先史時代の壁画が広く知られることとなりました。

なぜこんな壁画が描かれたのか・・・。狩猟成功を祈る儀式の一環だった可能性がありますし、動物たちが信仰の対象とされていたのかもしれません。あるいは狩りのノウハウを次世代に伝える役割を果たした可能性も否定できません。それとも当時のアーティストが自分の腕前を披露しようとしてこういうことをやったのかも・・・。しかしそれが現代にまで残存しているというのもすごい話です。


参考文献