日向坂46の小坂菜緒さんのラジオ番組であるJ-WAVEの「SONYSONPO QUEST FOR THE FUTURE」で紹介されていた書籍『色の物語 黒 NOIR』。黒という色には様々なイメージが宿っています。禁欲、メランコリック、不気味、エレガント、病・・・。アンリ・マティスは「黒はそれだけであらゆる色を包括し、あらゆる色を無に帰す」と言いました。

私たちが「黒」と聞いて思い浮かべるのは、漆黒の闇や墨のような深い色かもしれません。しかし、厳密に言えば、可視光を100%吸収する「完全な黒」はこの世界には存在しないのだとか(ブラックホールはどうなのかは知りません)。ただし、それに限りなく近い「究極の黒」を実現しようとする研究は進められており、その成果として驚くべき「超黒」な物質が生まれています。うーん、純黒の悪夢とはよく言ったものだ。

私たちが物を「黒」と認識するのは、その物質が光をほとんど反射せずに吸収しているからです。通常の黒い布やペンキも多くの光を吸収しますが、微量の光は反射するため、わずかに光沢が生じます。しかし、理論的に完全な黒とは、あらゆる光を100%吸収し、まったく反射をしない状態を指します。想像しづらいかもしれませんが、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』に出てくる「虚無」みたいなものでしょうか。

現在、「世界で最も黒い物質」として有名なのが「ベンタブラック」です。これはイギリスの企業サリー・ナノシステムズが開発しました。ベンタブラックは、光の99.965%を吸収してしまい、ほぼ完全に光を閉じ込める特性を持っています。光を閉じ込めるって、ほんとにブラックホールみたいですが、画像を検索してみたら見つかりました。気持ち悪いので転載しないでおきます。

さらに研究は続けられ、2019年にマサチューセッツ工科大学の研究チームが発表した物質は、ベンタブラックを上回る光吸収率を持つとされています。その吸収率は99.995%に達し、史上最も黒い物質が生み出されたことになります。余計な発明だと思いますが・・・。ちなみにこの物質はあまりにも黒すぎて、光学顕微鏡でもその表面構造を観察するのが困難だと言われています。

こういう「黒」を一体何に使うのか? 例えば、天文学の分野では、望遠鏡の内部にこの技術を利用することで、不要な光の反射を防ぎ、より正確な観測ができるとか。また、軍事技術や航空宇宙分野においても、熱吸収やステルス性能の向上を目的とした応用が進められています。でもステルスでレーダーには見つからなくても、ブラックすぎる飛行機が青空の中を飛んでたら逆に肉眼で見つけられそうな気がしますけどね・・・。

今のところ光を100%吸収してしまう「完全な黒」は理論的には存在しないことになっていますが、それに限りなく近い「究極の黒」を追求する技術は、私がまったく知らなかったところで、科学の進歩とともに進化を続けていました。ベンタブラックやそれを超える超黒物質は、もしかしたらいつの間にか私達の生活を便利にするアイテムとなって登場するのかもしれません。


参考文献