いやー、知らなかった、知らなかった。世の中にはまだまだこんなヴァイオリン協奏曲があるだなんて・・・。
一般的にコンサートのプログラムに掲載されるヴァイオリン協奏曲は相場が決まっています。
メンデルスゾーン
チャイコフスキー
ブラームス
シベリウス
ベートーヴェン
モーツァルト
ブルッフ
ヴィヴァルディ
大体こんなところでしょう。たまにバッハとかプロコフィエフとかショスタコーヴィチとかシューマンが採用されますが、全体的に見てメンデルスゾーンからヴィヴァルディあたりでもう6割、7割くらい埋まっているのが実情ではないでしょうか。統計を取ったわけではないのですが・・・。
そもそもベートーヴェンを初めとして、有名作曲家はヴァイオリン協奏曲を1曲しか書いていない一方でピアノ協奏曲は複数作っているということがありがちです。ヴァイオリンはピアノほど和声を作り出すことに向いていませんから、結局きれいなメロディで歌い上げるという表現に傾きがちであり、そうなると作曲家としての腕の見せどころが限られてくるので面白味に欠けるんでしょうね。
というわけで「ワイ、大体のヴァイオリン協奏曲知っとるもんね」と思っていました。
でも知りませんでした。こんな曲があることを。The Butterfly Lovers Violin Concerto(梁山伯と祝英台)です。
ウィキペディアによると、
ヴァイオリン協奏曲「梁山伯と祝英台」(りょうざんぱくとしゅくえいだい、中:梁祝小提琴协奏曲、英語: The Butterfly Lovers Violin Concerto)は、中国の民間説話にある悲恋物語「梁山伯と祝英台」を題材として、何占豪と陳鋼が1958年に作曲したヴァイオリン協奏曲。曲が作られた当時、作曲者の2人はまだ上海音楽学院の学生であった。ピアノ協奏曲「黄河」とともに中国のクラシック音楽作品として代表的な曲の一つ。原作となった民間説話と同じく、しばし梁祝と略される。
1959年5月27日に、中華人民共和国成立十周年記念として、兪麗拿(Yu Li-na、中)のヴァイオリン独奏と樊承武が指揮する上海音楽学院の学生管弦楽団により、上海にて初演。演奏時間は約27分から28分。
では「梁山泊と祝英台」とは一体何なのか? これもウィキペディアからの引用ですが
中国の東晋の時代、会稽郡上虞の祝家の娘である祝英台が男装して余杭に遊学に出た途中に会稽から来たという梁山伯に出会う。ともに学ぶこと三年、深い友となった二人だが祝英台が女の身であることは知らないままであった。その後祝英台が学業をやめて里に帰ったので梁山伯が会いにいくと祝英台は馬文才といいなずけになっていた。梁山伯は思い悩み鄞県県令の職にあったときに死んでしまう。祝英台が嫁ぎに道をゆくときに鄮県県城の西の梁山伯の墓のところを通りかかると急に嵐が吹く。輿を降りて墓の前に行くと墓が開き、その穴に身を投げると二匹の蝶が出てきてひらひらと飛んでいった。
というもの。要するに悲恋物語ってやつですね。「祝英台が男装」ってなんじゃこりゃと思うかもしれませんが、要するに昔の中国ですから高等教育へのアクセスは男子に限られていたのでしょう。ちなみに同様の理由で近現代の日本も大学は女子学生を受け入れておらず、戦後の1948(昭和23)年、新学制による学制改革により、ようやく女子も希望する大学へ入学可能となっています。というわけで祝英台が男のふりをして学問を修めたということなのでしょう。
そして梁山泊と祝英台は現世では結局結ばれることはなかったものの、どうやら生まれ変わって(?)蝶となって愛し合うことが叶ったということのようです。
こういう物語を、どこか懐かしいメロディで全編を彩ったのがThe Butterfly Lovers Violin Concerto。
2024年には、シンガポールの若手ヴァイオリニスト、Chloe ChoaがCDをリリースしています。録音の新しいものを、ということであればCDはこれ一択でしょう。
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