あるとき、私が演奏するベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」』を指導してくださっているピアニストの先生が「ヴォーン・ウィリアムズの「あげひばり」はいい曲だ」と言い、そうだそうだその通りだとひとしきり盛り上がりました。

「でも私は2小節で挫折しました」という話をすると(でも挫折したのはそうとう昔で、今の自分とは技術レベルがかなり異なるのだが)、先生は「いやそうでもない、きちっと音階が弾けていれば案外手が動いて形になる」と教えてくれました。そうだったのか!

というわけで楽譜を引っ張り出して弾いてみると、確かにそうでした。こりゃ俺でも弾けるわ。今すぐ弾けと言われたら無理だけどじっくり時間をかけたら対処できるわ、という譜面でした・・・。難攻不落だと思っていたら、そう思っていただけであって実際はそうではありませんでした。

いちいちここに書き記すまでもありませんが、ヴォーン・ウィリアムズの名曲「あげひばり」(The Lark Ascending)は、ヴァイオリン独奏のための作品として広く知られています。ただ、めったに実際に演奏されることはないので(イギリスだときっともっと広く親しまれていると思うが)、CDで聴く人がほとんどでしょう。

ざざっと楽譜を見た限りでは、音階練習が要であるのは間違いないでしょう。でもそれ以外でも重要そうだと思ったポイントがあります。メモしておきましょう。

1.ポジションチェンジ
この曲はひばりが上昇したり下降したりする様子を表現したいのでしょう、頻繁にポジションチェンジが求められます。ポジションチェンジのときにガクッとなると聴いている方も「!?」となってしまいます。日頃の音階練習でスムーズに移動できるようにしておくことが不可欠です。

2.レガートとボウイングのコントロール
「あげひばり」には、長く伸びるフレーズが多く登場します。これを美しく演奏するためには、音階練習の際に弓の圧力や速度を細かく調整し、スムーズなボウイングを意識することが大切です。バロックとか古典ではあまりここまで長く伸ばすことはありませんから、慣れが必要ですね。

3.音程が大事。当たり前か。
曲中では、微妙な音程の変化が求められる場面が多々あります。日常的に正確な音程を意識しながら音階練習を行うことで、本番でも安定したピッチを保つことができます。とくに、これはひばりの鳴き声を表現しているのでしょうか、ところどころで重音奏法が使われています。パガニーニみたいに至難の業ではないので、ゆっくり練習すれば対処できるはずです。

というわけで、「あげひばり」は、幻想的な雰囲気と繊細な表現が求められる楽曲ですが、楽譜を「自分が弾くんだ」という目線で改めて調べてみたら、必要な技術は決して特別なものではありませんでした。日々の音階練習を丁寧に行い、ボウイングの精度を高めることで、着実に演奏の完成度を上げることができるはずだという手応えを得ました。まだ本格的な練習はスタートさせていませんが・・・。