2025年1月13日(月・祝)に東京文化会館で行われた「第22回東京音楽コンクール 優勝者コンサート」。
東京文化会館の公式サイトによると
第22回東京音楽コンクール各部門の覇者が、ソリストとしてオーケストラと共演します。
ソリスト自身が選んだプログラムを披露するとともに、朝岡聡によるインタビューで演奏家の魅力と素顔に迫ります。
東京文化会館から羽ばたく新進アーティストの熱演に、どうぞご期待ください。
出演、曲目は次の通り。
トランペット:東川理恩 *金管部門第1位及び聴衆賞
ベーメ:トランペット協奏曲 へ短調 Op.18
ソプラノ:小川栞奈 *声楽部門第1位及び聴衆賞
J.シュトラウスII:春の声 Op.410
オッフェンバック:オペラ『ホフマン物語』より 「生け垣に小鳥たちが」
グノー:オペラ『ロミオとジュリエット』より 「私は夢に生きたい」
ベッリーニ:オペラ『夢遊病の女』より 「ああ、信じられないわ」
ヴァイオリン:金子芽以 *弦楽部門第1位及び聴衆賞
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
感想を書きとめておきます。
東川理恩さんの演奏について。トランペット奏者にとっては有名かもしれませんが、一般の人にしてみれば「知らない曲だな」と思うでしょう。私も予習のために動画サイトで見るまでそういう人がいてそういう曲を残しているなんて知りませんでした。聴いてみると勇壮な箇所もあり、また技巧的なところもあり、もっと知られて良い作品だと感じました。トランペット協奏曲といえばハイドンが有名ですが、あえてこれを選んだところに東川理恩さんの意気込みが感じられます。彼女のトランペットの音色の嚠喨と響き渡ること(金管楽器でとても大事なことですね)。私は1F席後方でしたが、しっかりと聴き取ることができました。
小川栞奈さんのソプラノについて。4曲それぞれ個性が異なるものを並べて、いろいろな引き出しがあるということを訴えたかったのでしょうか。コロラトゥーラ・ソプラノとして「生け垣に小鳥たちが」でのチャーミングさは無上のもの。「ああ、信じられないわ」ではこの長丁場の曲を、繊細な声で切々と彩ってゆきます。これはこの日のコンサートの目玉と言っても過言ではないでしょう。
金子芽以さんについて。私自身ヴァイオリンを弾くので、メンデルスゾーンの協奏曲がいかに高い頂なのかはもう十分わかります。また、有名な作品であるために色んな演奏家と自分が比べられてしまうだろうなというのも想像がつきます。でもハイフェッツとかオイストラフと比べられたらたまったものではありません。彼女はどうやら桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースに在学中らしく、その精緻な演奏に、「才媛」という言葉を連想しました。
メンデルスゾーンのこの作品は甘美である一方で哀愁が漂っているので、甘くなりすぎてもだめ、哀愁が漂いすぎると哀愁じゃなくて悲壮感が漂い、どうしたんですか討ち入りでもするんですかといった風情が出てしまいます。金子芽以さんはそのあたりをきちんと押さえ、端正な演奏に仕上がっていました。
この日の演奏会は朝岡聡さんというベテランの司会者を迎え、大変な盛り上がりとなりました。これから羽ばたこうとする若手アーティストたちの格好のジャンピングボードになったものと思います。
帰り道に会場出口が一時的に通行不能になっており、これから何か始まるのかな、演奏者あいさつでもあるのかな、と思っていたら小ホールのほうの演奏会を聴き終えた天皇陛下が私の目の前を通り過ぎて行かれました。驚かされました。
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