ベネット誰それ? ベネッセ?? そういう反応をする人が大半でしょう。英文学を学んだ人なら、もしかすると「アーノルド・ベネットのこと?」と気づくかもしれません。そうです。アーノルド・ベネットです。
ウィキペディアによると、
イーノック・アーノルド・ベネット (Enoch Arnold Bennett、1867年5月27日 – 1931年5月27日) は英国の小説家、劇作家、評論家である。『二人の女の物語』やクレイハンガー三部作をはじめとする「5つの町」シリーズやフランス的な自然主義的作風で知られている。これらの作品によって20世紀初頭の英国で名声を博したが、後年その作風や創作態度は議論を呼ぶことになる。
ということが書かれています。とにかく多くの作品を残した小説家だったようです。一方で「人はいかに生きるべきか」というハウツー本も残しています。『自分の時間 1日24時間でどう生きるか』もその一つ。私たちは誰しも1日は24時間と決まっています。大統領だけ1日26時間、ということはありません。
その24時間をいかに有効に用いて、少しでも自分の可能性を押し広げてゆくかを論じているのがこの本です。そのためには1週間を6日として計画すること、毎朝の30分が自分の中に奇跡を起こすこと、小さな一歩からでないと習慣は変わらないことなどが書かれています。
そしてこの本においては「自分の行動が自分の生活信条と一致していない人生というのは、無意味な人生だということなのである。そして、行動と生活心情を一致させるには、日々の生き方をよく検討し、自分を振り返り、断固として行動するしかないということである」とも述べられています。
この本が書かれた当時、インターネットもSNSもありませんでした。少しでもベネットが書き残した、良い人生を送るための秘訣に近づこうとするなら、情報の断捨離が必要だと思います。つまりSNSやニュースから得られる膨大な情報が、生活信条を見失わせる原因になることもあるわけです。「情報断捨離」を定期的に実施し、自分の内面と向き合う時間を増やすのが大事だと思いました。
なにしろ情報が多すぎると、どれを選ぶべきか迷い、重要な決断が先延ばしになりますね。それにネットというのは、えてして情報の質がバラバラで、真偽を見極める時間やエネルギーを消耗するという欠点もあります。マルチタスクや通知による中断で、深い思考や創造的なアイデアを生む時間が奪われてしまうとか、重要なタスクよりも、短期的な刺激に気を取られるなんていうのはSNSの最大の弱点でしょう。
ベネットはこの本でマルクス・アウレリウスの『自省録』を推薦していますが、これぞまさしく情報過多に対する最大のアンチテーゼ。ローマ皇帝マルクス・アウレリウスが自分の内面と徹底的に向き合い、自己内対話を積み重ねて生み出された言葉の数々。彼もまた決意だけでは不十分だ、実践してみて初めて意味がある、という趣旨の言葉を残しています。だからベネットが高く評価しているのでしょうね。
『自分の時間 1日24時間でどう生きるか』は1時間もあれば読めてしまう本ですが、時間の使い方を見直せるという点で、数年に1度は定期的に読み直したいと思いました。
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