近年、「ギグエコノミー」という言葉が注目を集めています。まあ、普段普通の新聞を読む限りではあまり目にしないことは確かではありますが、「近未来の世界を予想し云々」みたいな本を読んでいるとわりと登場する単語です。
これは、従来の正社員や契約社員といった安定した雇用形態ではなく、短期契約やプロジェクト単位で仕事を請け負う働き方を指します。UberやAirbnbなどのプラットフォームを活用したサービス提供者がその典型例ですね。Uber Eatsで働いている人ならわりと見かけるのではないでしょうか。個人的には赤の他人に自分が食べるものを運ばせるなんて虫唾が走りますが。・・・ともあれこのような働き方は柔軟性が高く、自分のペースで仕事ができる一方で、収入の不安定さや有給休暇とか育児休業がないとか、雇用保険、厚生年金といった社会保険への加入がどうなるのか(たぶんない)、といった課題も伴います。というわけで私は今後も「雇われて働く」というこれまでどおりの働き方が主流であり続けるだろうと考えています。
まず、雇われて働くつまりサラリーマンほど確実なものはありません。毎月きまって支給される賃金というものがあります。これは無くなってはじめてそのありがたみがわかる類のものでしょう。
さらに、社会保障の重要性が挙げられます。従業員として企業に雇用される場合、健康保険や厚生年金、雇用保険に加入できます。結婚して子どもを育てる、住宅を購入するという長期的な生活設計を立てる上でこういうものは欠かせないでしょう。ギグエコノミーでは、残念ながらそういうものは期待できそうにもないですね。やはり10年、20年と長期的スケールで人生を考えてみると、「雇われる」という働き方は依然として魅力的です。
次に、スキル開発やキャリア形成の観点からも、「雇われて働く」方が優れた選択肢となる場合が多いでしょう。サラリーマンをやったことのある人なら心当たりがあるでしょうけれど、社内研修や上司・先輩からの指導を受けることができます。新卒の人にとってこれはありがたい。一方で、ギグエコノミーでは、個人が自分自身のスキルアップを管理しなければなりません。特に若い人にとっては、会社の中にいることで得られる成長機会の獲得は大きなメリットとなります。
加えて、会社の中で働いていると、自分でも知らないうちに「〇〇ができます」という単なるスキル以上の「チームワーク力」や「コミュニケーション能力」が磨かれます。
もちろん、ギグエコノミーが増えないということを言いたいわけではないのです。特に専門性が高く、特定のプロジェクトに特化したスキルを持つ人々にとっては、魅力的な働き方であることに変わりありません。まあ、プロ中のプロに限られるとは思いますが・・・。
現時点でも副業OKな会社が増えてきていますから、より多くの人が副業や短期契約の仕事を選ぶ可能性も高まっています。しかし、平均的な能力のサラリーマンというものを想定してみると、安定性やキャリア形成でのメリットといった要素を考慮すると、やはり「雇われて働く」という選択肢が主流であり続けるのはごく自然な流れと言えるでしょう。
以上から、ギグエコノミーのような新しい働き方が今後も拡大することは確実ですが、従来の雇用形態をこそ、やはり普通の人々は選び続けるのではないかと考えます。
参考書籍
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