人間は大小な事決めをするとき、過去の経験だけではなく、未来の自分の姿を思い描くことが大きな影響を与えます。この「未来の自分」を意識する主観的な認識を、心理学では「拡張された自己」と呼びます。
世の中には10/10/10テストというものがありまして、
1.この選択をしたら、10分後はどう感じるだろう?
2.この選択をしたら、10ヶ月後はどう感じるだろう?
3.この選択をしたら、10年後にはどう感じるだろう?
このように短期、中期、長期の時間軸を用いて、転職すべきかどうかを考えるのが良いようです。
たしかに場の勢いだけで転職を決断するのはあまりにもリスキー。複数の視点から考察するのが良いのは明白でしょう。
今現在、転職すべきかどうか・・・。そう悩んでいるだけでは、「今」の視点からしか判断を下すことができず、それでどうなるのか、ということまで想像が及ばないものです。そうではなくて、中長期的にどうなるのかという未来の自分の姿を想像してみると、より幅広い可能性を考えながら判断を下すことができるようになるわけですね。
たとえば、今の職場に留まるとしたら、将来の自分はどんな状態になっているのでしょうか? それとも、新しい職場に移ることで自分の成長や適所を実現できるのでしょうか? このような問いを考えることが、拡張された自己を意識する一種のプロセスです。
拡張された自己の概念は、一方では逆境の中での出口を見いだす手がかりにもなります。たとえば「現職の保障を失うことの怖さ」は、拡張された自己を想像することで「新たな選択肢で中期的に安定を得る」という視点に変わります。また、辞職を選択しない場合でも「今ここでの成果が未来の自分を支える」という意識が、職場でのやりがいを促進します。
上記のように10/10/10テストをしてみると、場合によっては「転職しないほうがいいのかな」という結論になったり、そもそも次も人に雇われるという働き方を選ぶこと自体誤りだという判断に行き着くこともあるでしょう。いずれにしても目先の損得だけで判断するよりもずっと納得感の得られる行為であることは間違いないでしょう。
余談ながら「拡張自我」という言葉もあります。「拡張された自己」と似ていて紛らわしいですね。
これは心理学で、身の回りのものを自分の一部として認識していることを指します。たとえば、腕時計、鞄などを褒められたりすると、嬉しくなることがあります。これは、自分が自分周辺のものを自らの一部として認識しているためです。たまにいませんか。ロレックスとかタワマンとかをやたらとありがたがる人が。これは、ロレックスは高級品だ、だから自分も高級な人間だ、と脳内で都合よく変換されてしまっているんですね。
内向型の人間は、自分を見つめることが幸福に結びついていることを認識しているので、そういう思考パターンに陥ることは絶対にありません。でも近くにそういう人がいるとすごく厄介です。静かに立ち去りましょう。
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