ヴァイオリニストの川畠成道さん。デビューから25年以上経過し、精力的にリサイタルやCD制作などに取り組んでいます。数年前からYouTubeチャンネルを開設し、とくに小品について解説しながら演奏風景を公開していました。

ところでヴァイオリニストの重要な仕事の一つが、後進の指導です。音楽というのは伝統芸能のようなものであって、弓の動かし方とか曲の把握の方法などは先生から弟子へ譲り渡されてゆくものです。小澤征爾さんが好例ですが、優れた音楽家であるほど、自分が培ってきた技能を次世代へ手渡そうとして、なるべく多くの教育機会を確保しようとしているものです。ヴァイオリニストで言うなら江藤俊哉さんはそれこそ川畠成道さんの他にも千住真理子さんや諏訪内晶子さん、矢部達哉さんなど多くの弟子を取っています。これほど多くの後進を育てたヴァイオリニストも滅多にいないでしょう。

そして川畠成道さんもやはり指導という仕事をしているようでして、その様子がYouTubeで公開されました。





全部で3回のシリーズものらしく、今回は第1回。

こういうありがたみのある動画が無料で公開されている辺りに時代の流れを実感します。
曲はチャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』。そしてレッスン内容を視聴してみると、じつはごく常識的なことを伝えています。レッスンモデルの方もこの難しい曲を弾けているだけに、技術レベルで言えば十分。それでも川畠成道さんはあくまでも常識的な指摘をしています。例えば、

「弓に圧力をかけることで音を出そうとしている。そうではなくて、弓を横に使い、スピードを利用して音を出せるとよい」

似たようなことは私もレッスンで言われました。川畠成道さんとは無関係の私の先生にです。

別の箇所では、

「弓のスピードが一定だと音楽に動きがなくなる」

これも私も言われます。でも弓のスピードを変えると途中で弓が足りなくなったりするんですよね。好きで一定にしてるわけじゃないんです。とはいえ弓のスピードが一定だと音楽に動きがなくなるんですね。ただ、弓のスピードを変えると途中で弓が足りなるんです(堂々巡り)。

レシタティーヴォ風の箇所では、

「大げさにクレッシェンドしたり、というわけではないが、多少の上がり下がりはあったほうがよい」

私もアダージョ楽章のレッスンで言われがちです。とはいえ表情を出したり雰囲気をキープするのが難しくて、多少の上がり下がりをつけるだけのゆとりは私の技術レベルでは不可能なんです。上がり下がりを取り入れるとテンポが崩れて4分の4拍子が局地的に4分の5拍子になったりするんです。

「動きが小さい」

仕方ないでしょ。難しいところを弾こうとするときに、まず回避すべきはミスすること。楽譜にない音を弾いてしまうこと。そのためには細心の注意を払うべきです。必然的に動きが小さくなるんです。これはもう今の私の技術レベルでは解決できないんです。

・・・川畠成道さんのレッスン動画を見ながら、「みんな言われとることは同じやんけ」という感想を持ちました。

それとこの動画の後ろの方に絵画が床に置かれています。絵画って壁にかけるものじゃなかったのか。床に置いてもいいのか。知らなかった。勉強になったぜ。