『ラブライブ! スーパースター!!』の第9話「ザルツブルガー・ノッケルン」。私の推しウィーン・マルガレーテにとうとうスポットライトが当たりました。なぜか食いしん坊キャラという属性が付与されてしまった彼女。まるで「強敵を仲間にした途端にぽんこつになる」という少年ジャンプとかで見かけるパターンを思わせます。

第9話の要点は「Liella! にうまく馴染めなかったウィーン・マルガレーテが、色々あって一員として溶け込むようになった」というもの。つまり人間ドラマですね。

確かに彼女はLiella! のことを散々敵呼ばわりしていたわけですから、すぐに仲間意識を持てと言われても難しいでしょう。そもそも昨年のラブライブ! では単独出場していました。ラブライブ! はスクールアイドル同士の競争であり、スクールアイドルというと「〇〇高校アイドル部」のように(たとえばAqoursのように)団体出場を想定しているはずです。そこへ単身乗り込んだのでした。いや、1人で地区大会2位を獲得できるわけですから、彼女が実力を認めるほどの仲間を見つけるのは、学校という限られた空間のなかでは現実的ではなく、どうしても個人プレーにならざるを得なかったのでしょう。そりゃオーストリアの志望校に落ちたとはいえ音楽の実力は十分、歌唱やダンスだけでなくヴァイオリンも演奏でき、異国日本でも(カリキュラムはオーストリアとは違うはずなのに)学力は優秀、お菓子まで作れてしまう。こういうを才媛というのですね。そりゃ話が合う、対等の能力の人を見つけるのは難しいでしょう。

必然的に、なんだかぼっち感が出てきます。

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周りには誰もいません。なんだか普段のワイみたいで陰キャ感が漂っています。でもクラスメイトとしょうもない話をしているくらいなら、夏目漱石とかゲーテとかを読んでるほうがよほど有意義です。(私はそのことに気づいて職場の同僚とは一切昼食をともにせず、1人でNHKのドキュメンタリー番組を見たり本を読んだりするようになって4年が経過しました。おかげで昼休みの時間が充実しています。)

Liella! の一員となったあともやはりあとの実力の違いを実感し、きな子と夏美には厳しい評価を下します。こうしてLiella! に亀裂が走りそうになりますが、最後はグループが団結して地区予選に進む、というもの。こうしてマルガレーテもLiella! のメンバーとなったのでした、という運びでした。

これはあくまでもフィクションですから、最後は視聴者が気持ちよくなれる方向に持って行くのは分かりきっていました。しかしもしこれが現実だったら、マルガレーテは本来もっと上を目指すべきだったのに、実力が格下の人と同じ場所にとどまることによって、そのチャンスを自ら捨ててしまったということになりはしないでしょうか。たとえばサッカーの才能がある子どもは、あえて地元のチームに入れさせず、Jリーグ育成組織などに入団させると聞いたことがあります。このように、実力がある人はよりハイレベルな場所を目指していかないと、自分の能力が開花しないわけです。

本田圭佑さんは令和4年度近畿大学卒業式において次のようにスピーチしています。

夢をかなえるために僕が一番大事にしていることをお伝えします。ものすごく簡単なことですが意外にやらないことです。「環境にこだわれ」ということです。成果が出せない人とか夢を叶えられない人の多くは、その環境にこだわっていない。環境にこだわらない状況で、めちゃくちゃ頑張ってるんです。

ありません?そういう経験、僕もあります。環境のこだわりが甘いんです、その状態はもっと伸びる場所をもっとその才能がいかされる場所があるはずで、夢に近づくスピードをもっと加速させる場所があるはずなんです。

卒業までは生まれた場所、親、選べなかったですよね、だいたい既定路線です。僕が信じているのはこの環境なんですよ。誰と会う、毎日何を見る、五感が最高の習慣を作ってくれるはず。だからサッカーでいうと、全く環境でない場所で、自分なりにどんだけ一生懸命練習しているつもりでも、全国大会に行ったら化け物達がいっぱいいた、なんてことが皆さんの経験にもあると思いますが、まさにそれが僕が言ってる「環境にこだわる」ということです。
ウィーン・マルガレーテがなんとなくツンツンして孤独なのも、その能力ゆえ波長が合う対等なパートナーがなかなか見つけられないからではないでしょうか。『ラブライブ! スーパースター!!』ではLiella! という素晴らしい仲間が見つかったようですが、現実世界にも「ウィーン・マルガレーテ」がたくさんいるに違いないと確信しました。

ちなみに、ザルツブルガーノッケルンはモーツァルトの故郷ザルツブルグのお菓子です。ウィーン・マルガレーテ出身の地であるウィーンのお菓子といえばやはりザッハトルテでしょう。日本では日本橋や銀座の喫茶店で賞味できるようです。ただし非常に甘いのでコーヒーをお供にしないと、胸やけする可能性があります(私は初めて食べたときに甘すぎて手が一瞬止まりました)。