私の過去記事感想:「カナレットとヴェネツィアの輝き」では、新宿のSOMPO美術館で開催されている展覧会を見て感じたことを述べています。ヴェネツィア。沈む沈むと言われ続けて数十年、今のところまだ沈んでいません。東海大地震が来る来ると言われてまったく来ないようなものでしょうか。
この展覧会の物販コーナーで図録を購入したので、改めて読み返しているとあることに気づきました。
カナレットの絵画には、なぜか片隅にイッヌが描かれているのです。なぜ犬?
たとえば、展示番号18番の「サン・マルコ湾:北を望む」。ここにはサン・マルコ大聖堂や税関、大運河が描かれていて、普通ならそっちに視線が誘われてしまうでしょう。しかし画面の右下を見ると、白いイッヌが描かれています。港町だから魚が多いだろう、魚なら猫だろうと思いますがなぜかイッヌ。
展示番号19番の「サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ」も画面右下(なぜかやたらと右下にいる)にイッヌが座っています。今回も白いイッヌです。黒とか灰色ではなくなぜか白。この作品の解説は「それにしても、サン・ヴィオ広場の端でバラッツオ・バルバリゴの壁に向かっている男性は、一体何をやっているのであろうか」と結ばれています。
この解説を執筆した学芸員さんは、たぶんファミコン版のドラクエIIを遊んだことがあるんじゃないでしょうか。この作品の序盤でリリザの町という拠点を訪れると、片隅の壁に向かって立っている男がいます。話しかけてみると、「わっ!いきなり はなしかけないでくれ!おしっこが あしに かかったじゃないかっ。」何度話しかけても何度でも何度でもおしっこを足にかけ続けるためだけに存在しています。主人公に背を向けて立っているこの男の姿は、私がドラクエIIを遊んだのははるか昔のことなのに、今も目に焼き付いています。きっと学芸員さんも同じ思いでカナレットの作品を見たことでしょう。
話をイッヌに戻します。展示番号22番「モーロ河岸、聖テオドルスの柱を右に西を望む」。やはり画面中央やや右寄りの下方に白いイッヌがたたずんでいます。なんでそんなにイッヌが必要なのか?
続いて展示番号28番「ローマ、パラッツォ・デル・クイリナーレの広場」。やはり画面下に白いイッヌがいます。今度は2匹。お前ヴェネツィアにいるんじゃなかったの? なんで増えたの?
これはいわゆる「ウォーリーを探せ」でしょうか。画家の遊び心ってやつでしょうね。でもいつもイッヌばかりで飽きなかったのでしょうか。
このイッヌは他の画家にも真似されています。展示番号43番、ベロットの「ルッカ、サン・マルティーノ広場」。画面右にまたイッヌ。案の定白いイッヌ。
きりがないのでこの辺で切り上げますが、なぜかヴェドゥータのなかに白いイッヌが佇んでいるというのは、しかもカナレットだけじゃなくてどいつもこいつもこぞって白いイッヌを登場させているのは、もうネタでしょうか。手塚治虫作品にやたらとヒョウタンツギが登場するようなものでしょうか。
もしあなたが「カナレットとヴェネツィアの輝き」展を訪れることがあったら、間近でイッヌをどうぞご覧になってください。そして暇なら、何回このイッヌが登場するかカウントしてみるもの一興でしょう。
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