自分では弾けているつもりでも、実は全然弾けていないということがあります。これが非常に時間の無駄になってしまいます。弾けているつもりなので、これでOKと思い込んで間違った方向に上手くなってしまう。それでレッスンのときに先生から違うじゃないかと指摘されて、えっそうなんですかとなってしまう。一体何のために練習したのか・・・。

そういうポイントは、楽譜そのものがけっこう微妙というか、付点音符とか付点休符とか、細かい音符が書き込まれていてリズムとかテンポを確保するのがややこしかったりします。CDで聴こえたとおりに演奏しているつもりでも、自分の記憶が間違っていて、実際にはそういう演奏じゃなかったり、ソナタ形式の提示部と再現部ですこし違うのに、どちらも同じだと誤って覚えてしまい、両方同じで弾いてしまったり。あるいは、聴覚上はそう聴こえても実はちょっと違った弾き方だったり。

具体的に言うとベートーヴェンの音楽なんか、そういう地味に間違えそうな箇所がやたらと多いですね。そもそもベートーヴェンはピアニストであってヴァイオリニストではないので、ヴァイオリニストの気持ちなんかあまり考慮せずに作曲されてしまっています。そのせいなのか、曲は演奏効果があまり上がらない割には妙に弾きづらく、音も響きづらく、一体なんでこんな曲を書いたのかと思うようなことが、ヴァイオリン・ソナタでさえもちょくちょく見られます。嫌なやつ・・・。

そんなあるとき、私は思いつきました。なんで今まで思いつかなかったのか不思議なくらいです。きっと他の皆さんはとっくに実践しているに違いありません。

YouTube動画を半分のテンポに落として、聴こえてくる音に自分の動きをシンクロさせてしまうのです。シンクロというか、シャドーイングというか・・・。

YouTubeはありがたいことに、再生速度を変更させることが可能です。つまらない研修動画を倍速視聴して1時間かかるところを30分で終わらせることもできます。逆に、演奏上の難所は0.75倍とか0.5倍とかの速度にして、スピーカーから流れる音に自分の音を合わせていきます。私がやってみた限りですと0.25倍ですと音が「ブブブ」と乱れるのと、遅すぎて合わせづらかったです。最初のうちは0.5倍、慣れてきたら0.75倍、もう十分だ、という状況になったら通常速度で合わせます。

実際にやってみた結果、付点音符のややこしい箇所をじっくりと聴くことができて、「自分はわかったつもりで実はわかってなかったんだ」ということを悟り、間違いを訂正することができました。
意外なメリットがもう一つありました。音程が合っているのか、ずれているのかチェックできるということです。アマチュアのヴァイオリニストなんて音程が怪しいに決まっています。なにしろ有名プロオーケストラのコンサートマスターのリサイタルでもヒヤッとする瞬間がコンサート1回のうちに複数回あるくらいですから。

しかしYouTube動画と合わせて弾くことで、自分の音程がずれた瞬間即座にわかります。まあ1回くらいずれることもあるでしょう。もう一度ずれたら、そんなこともあるかなと。さらにまたずれたら、そこが自分の弱点だということです。というかそれを放置したら本番でますますひどい音程になってしまいます。何度もさらって補強しましょう。

・・・なんていうYouTube動画の使い方に気づいてしまいました。
ちなみにタブレット端末やスマホだと再生位置を示す赤い帯を触るとその位置にジャンプできますが、うまく「5分20秒」とか「6分50秒」などの狙った位置に指が当たらず、数十秒くらいずれるのはザラにあります。PCのキーボードなら右左のキーで5秒ずつずらすことができて簡単なので、この練習をするときはできればPCを利用したほうがいいですね。