万能の天才として知られるのはレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼は、イタリアのルネサンス期を代表する人物で、画家、科学者、発明家として知られます。彼の代表作には「モナ・リザ」や「最後の晩餐」があり、解剖学、物理学、工学など多くの分野で先駆的な研究を行いました。彼の発想は後世に大きな影響を与え、芸術と科学の両方で卓越した才能を発揮しました。
彼はパリ手稿Aと呼ばれるノートに次のようなメモを残しています。
才能を育てるためには、あなたは孤独でいるほうがいい。特に考えに集中しているときはなおさら。考察したものを常にイメージすることによって、しっかりと記憶できるから。もしあなたが1人なら、あなたのすべてがあなたのものだ。ところがたった1人でも連れがいれば、あなたは半分になる。付き合いが増えるだけ、あなたは何もできなくなる。つまり、もしあなたが大勢の人と一緒にいればいるほど、不自由な人生を送ることになるよ。
一般的に孤独であることはネガティブなイメージで語られがちです。私みたいに友だちがいない人、いなくて幸せな人、人との接点が減れば減るほど幸せを感じる人はおそらく変なやつ扱いされて周りの人は私となるべく関わりを持たないようにし始め、ますます私は孤独になり、そしてますます幸せになれます。ウィン・ウィンですね・・・、でもそういう人は少数派なのでしょう。
これに反してレオナルド・ダ・ヴィンチは「もしあなたが1人なら、あなたのすべてがあなたのものだ。ところがたった1人でも連れがいれば、あなたは半分になる。付き合いが増えるだけ、あなたは何もできなくなる」と語り、孤独であることのメリットを強調しています。そもそも彼ほどの天才であれば、彼と知的水準が同じで、お互いに刺激を与えあうことのできる仲間を見つけることもまず不可能だったでしょうし、であれば一人で黙々と自分の研究課題に向き合っているほうがよほど人類のためだったはずです。
ルネッサンスの特徴として、芸術作品はただの表面的な美ではなく、内面の深い考察や感情が反映されています。これは、人の表情や動きがパターン化されていて、どれもこれも似たようなものに見えてきてしまう(実際、どれもこれも同じなのだが)中世の絵画と比べると明らかでしょう。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の微笑みや「最後の晩餐」の緻密な構図は、彼が孤独の中で得た深い洞察力の産物といえます。孤独による集中は、芸術家が対象物の本質に到達し、それを精緻に表現する助けとなりました。孤独であることで、芸術家は個々の作品に独自の視点を持ち込み、ルネッサンス期の革新と独創性を支えたのです。
さて、もしもレオナルド・ダ・ヴィンチにスマホやSNSがあったらどうだったでしょうか。ノーベル賞受賞者たちと頻繁に連絡を取り合い、ますます自らの研究に没頭したでしょうか。あるいは「こんなうるさい奴いらん!」といって放り投げてしまったでしょうか。
そもそも現代は様々な学問分野が細分化され、高度に専門化されているため、レオナルド・ダ・ヴィンチのようにあらゆる分野で卓越した業績を上げる人物というものが生まれない環境になってしまいました。その意味でも、彼の存在というのはルネッサンスという時代が産み落とした空前絶後の人物だったのでしょう。
参考書籍
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