スティーブ・ジョブズもオバマ元米大統領も、なぜか毎日同じ服を着ていることで知られていました。なぜでしょうか。

それは、決断の数を減らせるからでした。

オバマ元大統領はこう語っています。
私は常にグレーか青色のスーツを着用している。こうすることで私が下さなければならない決断の数が減るんだ。何を食べるか、何を着るか決める余裕はないし、他に決断しなくてはならないことが山のようにあるからね

じつは人間はなにかを決めるたびに脳に疲労が蓄積してしまう生き物なのだそうです。
何色の服を着るかで、肝心の政治的決断のクオリティが下がってしまったら、国民にしてみればたまったものではありません。

経営コンサルタントの大前研一氏も、「自分だけの定番品を決めておくこと」を『遊ぶ奴ほどよくデキる!』という本で提唱しています。これには2つのメリットがあるようです。
①自分のニーズに合っているから、不便さからくるストレスがない。
②古くなったらまた同じモノを買えばいいので、次はどれにしようかと悩みながらあちこち見て回る必要がない。

例えば大前研一氏はPCを持って出張するときはTUMIのバッグ、普段の靴はコールハーンのウォーキングシューズと決めているそうです。(そういえば、大前研一氏もいつもマオカラーシャツを着ていますね。)

たしかに何を買おうかと悩んで時間を失うくらいなら、もっと有意義に時間を使うことができたはずし、高級ブランドだからといって必ずしも使いやすいとは限りません。

というわけで私も朝食は納豆、昼食は日替わり定食とハナから決めつけています。これでもう何年も経過しています。とくに朝食=納豆はもう20年は続いています。健康診断でも問題は見つかっていません。

量子力学の発展に大きく貢献したことでノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンもやはり同じでした。ノーベル賞受賞というからにはさぞかし賢いのだろうと思いきや、あれこれ考えすぎて素早く結論が出せないという性格の持ち主でした。彼もその性格を熟知していたので変わろうと努力しました。でもマサチューセッツ工科大学の学生だったとき、食堂でデザートが何種類からでも選べる状況に置かれると、「どれを食べたらいいのだろう」と悩んでしまっていました。

あるとき決意しました。もうそんなしょうもないことで悩まないと。「デザートは、常にチョコレートアイスクリーム一択だ」。こうして彼はなんと大学卒業後もチョコレートアイスクリーム以外のデザートを選ばなくなりました。ずいぶん思い切った決断ですが、この「〇〇一択」をあらゆることに応用するようになっていきました。後年、彼は非常に高度な集中力を発揮するようになっていきますが、その原因をたどると、このように余計なことに気を遣わない習慣にあったようです。

これの真逆の状態が「選択のジレンマ」ですね。多くの選択肢の中から一番いいものを選び取ることができる環境がありながら、選択肢が多いがゆえにかえって一つにしぼり切ることができず、結局選択できない、というものです。やはりスーツだろうがデザートだろうがカバンだろうが、「〇〇一択」という決断は生きていくうえで有利なようです。