私はもともと旅先でお土産をあまり買いません。職場の同僚に対しても煎餅とかクッキーを配ることはまずありません。理由は、そもそも「週末は北海道へ行く」のようなプライベートなことをまったく口にしないからです。北海道に行ったことを知られていないわけですから、煎餅もクッキーも配らなくてOK。何一つ不思議なことではありません。

自分のための土産はどうかというと、これもやはりほとんど買いません。品物を見ているうちに、「果たしてこれは真に必要なものなのだろうか」と熟考してしまう癖がついているからです。出費が抑えられて良いといえばそうなりますし、「お前全然ワクワクしてない」と言われればたしかに平常心ではあります。でも帰宅してから「なんでこんなものを買ったのだろう」と木彫りの熊の前で途方に暮れるよりはマシでしょう。

では旅先でお土産を買ってしまう理由と、どんな土産なら買うべきなのか考えてみたいと思います。


旅先でお土産を買ってしまう理由と、どんな土産なら買うべきなのか

北海道とか沖縄とか、ハワイ・・・。旅先での経験や風景は一時的なもので、数日~10日程度で結局は帰宅しなければなりません。でもお土産はその土地を訪問したことを具体的に思い出せる手段です。手に取ることで、その場所や時間を鮮明に思い返すことができるわけですから、つい手が伸びるのでしょう。観光地にはその場所特有の名産品や工芸品があり、その場所でしか手に入らないものが多いです。こうした商品は、レア感がありますから誰もが購入するのもわかります。

でも木彫りの熊とかが典型的な例ですが、「一体何に使うんだ」と我に返るようなものもあります。置物などは一時的に飾るだけで、後に忘れられてしまうことも多いです。私の場合はマルタ島で買ってきた、マルタ騎士団の謎のガラス製の四角い何か。巨大な四角いガラスの真ん中にマルタ騎士団の紋章が描かれています。一応毎日視界に入っているはずなのですがこれといった感慨を覚えません。

このような土産を買うことで荷物が増え、帰り道での持ち運びが不便になることもあります。私は成田空港で、「アンティークの間接照明らしき何か」を買ってきたが荷物受け取り場のレーンで破損して出てきたことにクレームをつけている夫婦を見たことがあります。そりゃクネクネした木材なのか金属なのかわからないか細い物体ですから破損しますわ。そしてそういうものは、家に帰ってから保管する場所も活躍の目処もなく、結局使わないまま処分しちゃう人もいるはずです。

では一体どういう土産なら買うべきなのか。私は2024年8月のイタリア旅行で我ながらしょうもない土産を購入しました。

・カラヴァッジョの絵画がプリントされたマウスパッド
・ミケランジェロの絵画がプリントされたTシャツ
・ヴァイオリン作りの名匠ストラディヴァリのサインが印刷されたTシャツ
・本革のカバン
・石鹸
・コーヒー

書き出してみると本当に「なんじゃこれは」と思うようなものが多いです。ただ、「これを使っていると自己肯定感が上がるだろう」という観点で選びました。他人から見れば笑止千万かもしれませんが、自分としては後悔はなく、またお土産以外でも旅を通じて「次回の旅はこうしよう」というノウハウの積み重ねがあったので満足しています。

要するにお土産というのは商品の価格で価値が決まるというわけではなく、自分がそれを手に取ったという意思決定に満足・納得できるかということが大事なのでしょう。お土産選びに限った話ではありませんが、やはり自分の価値基準を持っていることはとても重要なことなのでしょう。