ヴァイオリンを練習する人ならいつかは通過しなければならないのが練習曲「クロイツェル」。ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」ではなく、練習曲のほうのクロイツェルです。

先生から「やれ」と言われて一応着手するものの、この単純作業みたいなやつの何が良いのでしょうか。一応楽譜の端っこのほうに古めかしい言葉遣いでああしろ、こうしろと書いていますが、音楽のテクニックを文字情報で伝えるのは限界があります。というか無理でしょう。やったことのないもの、できないものはイメージできません。イメージできませんからそのように弾けません。よっていつまで経っても同じところを堂々巡りして上達しません。まるで砂漠に水を撒いているような気がしてしまいます。それで年ばかり重ねていき、ある時「アッー! ワイ、一生クロイツェル・ソナタ弾けないや」と気づきます。適性がないのに無理に続けるとこうなります。

ではクロイツェルを練習するメリットって一体何なんでしょうか。一応自分なりに整理してみました。


クロイツェルを学ぶメリットは何か


1.技術レベルアップ
クロイツェルの練習曲は、スラー、スタッカート、レガート、ポジションチェンジ、ヴィブラートなど、基本的な演奏技術の習得とレベルアップに(きっと)役立ちます。これらのテクニックは、どの曲でも必要とされるため、クロイツェルを通じてこれらをしっかりと身につけることで、幅広い楽曲に対応できるようになります。私はまだ対応できていませんが。

2. 左手の技術向上
クロイツェルは、左手の指の独立性や、ポジションチェンジの精度を高めることに着目して作られているだろうなと思えるものがあります。例えば、複雑な指の動きや、素早いポジションチェンジを要求される箇所が多くあり、これにより左手の柔軟性と精度が向上するはずです。また、指の力を適切にコントロールしながら、きれいな音を出す訓練にもなります。ただ、どれもそうなのですが曲の後半の方にいくとやりづらい調性が出てきて指を押さえるだけで一苦労します。無理に練習するとかえって逆効果な気がしなくもありません。


3. 右手のボウイング技術向上
右手の弓のコントロールにも重点を置いているな、という曲も収められています。多様なボウイング技術が必要とされ、特に弓を軽くスムーズに動かす技術や、弓圧の調整を身につけることができそうです。これにより、音色のバリエーションを広げることができ、曲に合わせた表現力豊かな演奏が可能になります。


4. 総合的なレベルアップ
クロイツェルの42の練習曲は、難易度やテクニックのバラエティ豊富です。これにより、さまざまな演奏技術を段階的に習得することができます。例えば、最初の方のエチュードでは基礎的なリズムや運指が中心ですが(ただし1曲めがなぜか妙に難しい)、進むにつれて複雑なリズム、テンポの変化、弓の扱いの技術が求められるようになります。これにより、全体的な演奏スキルがバランスよく向上できるでしょう(ただし最後の方の重音奏法も難しくて嫌気が差す)。


5. 音楽的表現力の向上
カデンツァみたいな曲が収録されているので、誰もが一度は「ブルッフみたいだ」とか思いながら弾いてみてボロボロになって挫折した経験があると思います。こういうのは単なる技術練習にとどまらず、音楽的な表現力を養うことにも役立ちます。各エチュードは、メロディやリズムに変化があり、フレージングやダイナミクスを考えながら演奏することで、音楽全体の流れを理解し、それを表現する力を養うことができるでしょう。私は弾くだけで力尽きてしまいますが。


6. 演奏者としての土台づくり
クロイツェルを通じて、ヴァイオリン演奏に必要な全般的なスキルを強化することができるため、これをしっかり学ぶことは、ヴァイオリニストとしての土台を築くことになります。この土台がしっかりしていると、将来的により高度なレパートリーにもスムーズに取り組むことができます。ベートーヴェンやブラームスといった高度な作品を演奏する際にも、クロイツェルで学んだ技術が大いに役立ちます。だからプロ奏者でもクロイツェルは必携だそうです(と私の先生が語っていた)。

というわけでつらつら書いて見ましたが、プロでも必携ということは私も一生これをやる羽目に陥ったということでしょうか。辛すぎる・・・。