イタリア・クレモナといえばヴァイオリン作りの名匠ストラディヴァリを始めとするヴァイオリン製作のメッカです。私がとあるヴァイオリン販売店の方から聞いた話では「しかしながら彼の死後、クレモナにおけるヴァイオリン製作の伝統は次第にやせ細っていってしまった。しかし20世紀になり、ムッソリーニがこの地におけるその伝統を(無理に)復活させた」とのこと。

というわけで今もこうしてヴァイオリン博物館があったり、ただ単にクレモナで修行したというただそれだけのことで「イタリア製ヴァイオリン」を名乗って価格が日本製、中国製のそれよりも2倍くらい違ってしまったりということになっています。

おそらくここに足を運ぶのは一生に一度くらいでしょうけれども、私もクレモナのヴァイオリン博物館にたどり着いたので感想を書き留めておきます。(今も旅行中なので本当にさらっとだけにしておきます。)

・ほとんどの人はミラノ中央駅からクレモナに向かうと思うが(私はクレモナに1日宿泊した)、駅から駅まで1時間かかる。クレモナ駅からヴァイオリン博物館は1.5kmくらい離れている。夏などとくに歩きは無理。歩きに自信がある人でも石畳の道でこの距離はきつい。駅前にタクシーがいればタクシーを利用したほうがよい。7.5ユーロほどで到着できる。

・市立博物館(フレスコ画などが見られる)、考古学博物館とのコンビチケットあり(2024年時点で14ユーロ)。

・ヴァイオリンという楽器の来歴から説き明かされている。また、この楽器の仕組みとか、製作の時につかう道具なども展示されている。

・しかし圧巻は何といってもアマティやストラディヴァリウスだろう。ストラディヴァリが1715年に作ったという「クレモネーゼ」を始めとして、ざっと12台ほどの名器が展示されている。これをもしオークションですべて売却したら20億から30億くらいになるだろうか。富裕層になれるじゃないかと一瞬考えてしまう。かつて六本木でストラディヴァリウスの展示会というものがあったが、あれはあくまでも1週間ほどの期間限定のイベントだった。それを考慮すると、これほどまでにヴァイオリンの名器が集っている光景を見られるのは世界でもここだけだろう。

・様々なヴァイオリンの名器を見ていると、やはり個性というか形が微妙に違っており、しかもどれも美しい。職人一人一人の匠の技が存分に活用されて作られたヴァイオリンという楽器は、まさにイタリア人が生み出したものといえる。

・・・というのがざっとした感想になります。私が使ってるヴァイオリンも、製作者によるとクレモネーゼをコピーしたものだそうです。そのオリジナルを目撃することができ感無量でした。たぶんこの場所に来ることは二度とあるまいと思いながら眺めるのは一生ものの思い出となりました。素晴らしいひと時でした。