マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』。タイトルは有名でも一体どんな作品なのか人にセウ名できるか、というと答えに窮しがちです。これは南北戦争時代のアメリカを生きたスカーレット・オハラと彼女の周りにいるアシュリ・ウィルクスやレット・バトラーといった男性を主軸に、スカーレットの波乱に満ちた一生や、そういう人生を送らざるをえなかった当時のアメリカ南部を描ききった大作であり、日本語版であれば2500ページほどにも及びます。

『風と共に去りぬ』、これは文庫版では大抵第2巻あたりに登場する言葉です。優勢だったはずの南軍がじつはそうではなく、とうとうアトランタは北軍に包囲されてしまいました。そこでレット・バトラーの助けを借りてスカーレット・オハラたちは故郷「タラ」の屋敷を目指して脱出する場面でこのように書かれています。

<タラ>の屋敷は無事だろうか? それとも、ジョージアを席捲した風と共に去ったのだろうか?
スカーレットは疲れた馬の背に鞭をあてて、少しでも先を急がせようとし、頼りない車輪の馬車は千鳥足でよたよたと進んでいった。
南北戦争が始まる前のアメリカ南部は奴隷制度のもとこれを使役する白人社会のなかに独特の文化がありました。ところが南北戦争という「風」が吹き荒れると、そういったものが跡形もなく消え去ってしまった、ということが言いたいようです。

アメリカでは言わずとしれたベストセラーとなり、日本を含む世界中で翻訳が発売されています。
しかし、現代日本人にしてみれば「有名な作品なのだから」と読んでみてもどこかで挫折してしまうのではないでしょうか。理由は一つ、読んでいてだるいのです。

私も正直なところ第2巻の真ん中あたりまでは読むのが面倒でした。なぜだるいのかというと、南北戦争というとアメリカ社会のあり方を大きく変えた出来事であり、アメリカ人にとっては徳川幕府の終焉のような扱いなのでしょう。

でも99.9%の日本人にとっては南北戦争なんて無関係ですし、同じ時期に起こっていたそれこそ徳川幕府の終焉と明治維新のほうがよほど重要ですしリー将軍よりも坂本龍馬とか土方歳三とかのほうがよほど共感できます。社会のあり方にメスを入れるというのなら『白い巨塔』とか『沈まぬ太陽』とかのほうがずっと馴染み深いでしょう。

このように、共感できる「何か」がないと、文芸作品というのはたちまち読み進めることが苦痛になってしまいます。しかも昔の作品だからなのか、非常に詳細に登場人物や風景、心理描写が描かれており、現代人の時間感覚に照らしてみると、テンポが遅く感じられることがあります。というかこれはもう「描写」というより「単なる説明」であり、読むのが苦痛です!! 

幸いなことに、人生において「何々を読まなければならない」というものはありませんから、「だめだこりゃ」と感じたらさっさと見切りをつけて別の本を読み始めるのも手ですし、世の中には「見切り千両」という格言もあります。日本人ですから南北戦争に共感できない・興味が湧いてこないのはむしろ当然だと思います。