2024年8月5日の日経平均株価は4451円安となり、1987年10月20日のブラックマンデーをしのぐ最大の下げ幅となりました。日経新聞(電子版)の見出しは「日経平均株価4451円安 下げ幅ブラックマンデー超え最大」。新NISAを始めたばかりで含み益が順調に出ていた方はここに来てガクッと含み損に転落した人も多かったのではないでしょうか。で、「なんで国はこんな制度を始めたのか。国民を貧しくするだけじゃないか。国が進める政策で何かいいものでもあったのか」と思う方もいるでしょう。というかネットニュースでそういう論調の記事を実際に目にしました。

私の場合、見解がまるで逆です。かつて澤上篤人さんは講演会で「アホが買えば株が上がる。アホが売れば株が下がる」と的確な表現をされていました(私はその講演会に出席していました)。まさにその通りで、市場のトレンドに乗って売買を繰り返すのは投機であって投資ではありません。また、新NISAというものはそもそも長期投資を前提としているものであって、短期的な相場の動きに一喜一憂する性格のものではありません。

私が資産運用を始めたのは「サブプライムローン問題」という言葉がニュースで使われるようになったころでした。サブプライムローン問題とは、
かつて好景気に沸いていたアメリカでは、住宅ブームが過熱しました。住宅バブルで価格が上昇すれば、住宅の担保価格が上がり優遇金利に借り換えできるという売り文句で、本来ローンが組めない低所得者層までマイホームを購入することができたのです。

しかし、住宅ブームが去ると住宅価格が下落。サブプライムローンからプライムローンへの借り換えができなくなったため、返済不能者が続出しました。こうして住宅ローンが不良債権化し、アメリカの株価が暴落。この「サブプライムローン問題」は、リーマン・ショックを発端とした世界的な金融危機の引き金になったとされています。

(三井住友信託銀行HP 「池上彰のもっと知りたくなる世界経済のはなし」第3回アメリカ経済と金融勢力について より)
これが2007~2008年ごろで、翌年にはリーマン・ブラザーズが60兆円もの負債を抱えて破綻します。野村証券が廃業したときの負債がおよそ3兆円でしたから天文学的数字です。さすがに米政府もこれを救済することはできず、「次はあそこが潰れるんじゃないか」という連想ゲームが世界中に広がり、株価は急落。経済は大混乱して世界的に景気が低迷、日本でも「派遣切り」などが連日のごとく報道されていました。

・・・という状態で投資信託を始めたものですから、積み立てれば積み立てるほど赤字になっていきました。たしか基準価額が9千円くらいのところから6千数百円くらいまで下がり、積み立てた金額に対してマイナス35%くらいまで赤字が拡大したのを覚えています。

それでどうなったか。私は「今はトヨタとかアップルとかの株をバーゲン価格で買えてるようなもんだしな。まあいいか」とそのまま淡々と続けて行きました。その結果、2012年ごろから黒字となり、2024年時点ではプラス85%くらいのところまで来ています。

資産運用のとある本(勝間和代さんだったか、橘玲さんだったか記憶が定かではない)、長期投資を念頭に置いた投資信託などでは効果を実感できるようになるためには5年くらいかかるらしいのですが、私もまさにそれでした。

投資初心者でリーマン・ショックを経験すると、最近の市場の動乱も「ああまたあれか」という既視感が強く、「また放置でOK」という気にしかなりません。というか「今回はもっとひどいかもしれないじゃないか」「だから今撤退するしかない」という気分になる方はもしかすると長期投資に向いていないのかもしれません(個人的見解)。というわけで私は短期的な株価のブレはとくに気にしません・・・。