奈良公園は、鹿と人間が共存している不思議な空間です。奈良公園というと東大寺、春日大社、正倉院、奈良国立博物館といった広大なエリアです。ここに暮らす鹿は1200頭あまりと言われており、万葉集にもその存在が見られることから、8世紀ごろにはあそこにすでに住みついていたようです。ということはその由緒はその辺の日本人よりももしかしたらずっと正しいのかもしれません。

鹿たちは普段は奈良公園の植物などを食べており、鹿せんべいはあくまでもおやつという位置づけになっています。おやつだから食べないかというとまったくそのようなことはなく、私たちがお店でお金を払って受け取ったその瞬間から鹿が猛烈な勢いで近寄ってきて食いついてきます。
そんなに鹿せんべいが好きなら販売店を襲撃すればよいのに、なぜかそういうことを企てず、観光客がせんべいを手にした時から近寄ってくるのです。

さて鹿せんべい、数年前は10枚で150円でした。
奈良公園(奈良市)に生息する国の天然記念物「奈良のシカ」の餌として知られる鹿せんべいが10月から50円値上げし、200円で販売されることが20日、シカの保護活動に取り組む「奈良の鹿愛護会」への取材で分かった。値上げは1991年以来28年ぶりで、消費税増税や材料費の高騰などが理由。

愛護会によると、鹿せんべいの材料は米ぬかと小麦粉で、直径約9センチ。現在は10枚1束150円で販売されており、観光客らに人気で1カ月に20万束を売り上げる。

(日本経済新聞2019年9月20日記事「鹿せんべい50円値上げへ 奈良、消費増税で28年ぶり」より)
というわけで今は10枚で200円です。1枚当たり20円です。これって高いのでしょうか、安いのでしょうか。

例えばココナッツサブレは1袋16枚入りで、近所のスーパーでおよそ90円で販売されています。ということは1枚あたり5円~6円。
なんと、人間が食べるお菓子よりも鹿せんべいのほうが高いという計算結果になりました。

カントリーマアムはどうでしょうか。1袋あたり19枚入っており、実売価格は280円ほど。ということは1枚あたりおよそ15円。
なんと、これまた人間が食べるお菓子よりも鹿せんべいのほうが高いという計算結果になりました。

というわけで、鹿せんべいは1枚あたりの価格を計算してみると、かなり高級な部類だと考えて差し支えないでしょう。もちろん、奈良公園でしか買えないこと、つまり全国展開できず、賞味期限などを考慮すると大量生産が難しいこと、量産メリットを生かしたコストダウンに向いていないことは考慮すべきでしょうし、この200円という価格の売上の一部は鹿の保護に役立てられていますから、単に1枚あたりの価格をもって単純に「高い」と断ずることはできません。

・・・と、自分を納得させようとするものの、やはり自分が食べているお菓子より高いというのは感情としてちょっと引っ掛かります。今度奈良公園に行ったら自分も1枚食べてみようか?