ヘンリー・デイヴィッド・ソローの「都会の暮らし。何百万人もの人々がいるのに、みな孤独。」という言葉はわりと広く知られています。
ソローはウォールデン池畔の森の中に丸太小屋を建て、自給自足の生活を2年2か月間送ります。その体験をまとめた『森の生活』は、のちの時代の思想家に大きな影響を与えたとされています。
さて彼の冒頭の言葉は現代の東京においても非常に適切なものであり、その意義は深いものがあるでしょう。なにしろ東京は約1400万人もの人口を擁する巨大都市であり、日々多くの人々が交錯していますが、その一方で、多くの人々が孤独感を感じているとも言えるでしょう。
岡山から東京へ引っ越してきて驚きました。生活リズムが忙しく、仕事や通勤に多くの時間を費やすことが一般的だという現実を目の当たりにしました。よく考えてみれば当たり前なのですが、「仕事や通通勤に多くの時間を費やす」人をそれまで見たことがなかったのです。このような状況では、友人や家族との交流の時間が限られ、人間関係が希薄化しがちです。また、大都市ならではの特徴として頻繁な転勤や引っ越しがあるため、深い人間関係を築くことが難しいことも孤独感の原因となっています。
また、街によって多様なコミュニティが存在する一方で、個々のコミュニティ間の繋がりが希薄であることが多いです。これにより、特定のコミュニティに属さない人々は、社会的に孤立するリスクが高まります。殺人とか放火とか、凶悪犯罪の加害者は大抵「職場で孤立しており云々」といった背景をもつことが多く、孤立しているがゆえに偏った考えを軌道修正する機会がないまま突き進んでしまっているのでしょうね。
そういうおかしな人にネットをもたせるとこれぞ最悪の組み合わせ。現代社会では、インターネットやスマートフォンの普及により、物理的な接触なしに他者と繋がることが可能になりました。しかし、これが逆に孤独感を助長することがあります。SNSなどを通じて表面的な交流が増える一方で、実際の対面での交流が減少するでしょう。ただでさえ孤立しがちなのにこれでますます孤立への道を突き進みます。
孤独感は、精神的な健康にも大きな影響を及ぼします。ストレスや不安、うつ病などのメンタルヘルスの問題が増加する傾向があります。東京のような都市では、これらの問題に対するサポートが必要とされていますが、適切な支援を受けられない人も多いのが現状です。なにしろそういうサポートがあるなんて、そう簡単に気づくものではありませんから・・・。
ソローの言葉は、東京という巨大都市においても依然として有効です。多くの人々が集まる場所であるにもかかわらず、東京は逆に人が集まるがゆえにかえって結びつきが希薄になり、孤独を感じてしまうなんて、なんて逆説的な話なのでしょう。
これを解消するためには、個々人の努力では無理な話だと思います。社会全体での取り組みが必要です。欲を言えばテクノロジーの進化や都市計画の工夫によって、より豊かな人間関係を築くための環境作りが求められているのですが・・・、じゃあ具体的に誰が何をするのか。東京都知事? 都庁? 政府? ・・・、具体的に誰がいつまでに何を、ということになるとさあっぱり解決策が私には思い浮かびませんでした。解決策はない。ゆえに「都会の暮らし。何百万人もの人々がいるのに、みな孤独」は永遠の真理なのかもしれません。
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