ヘルマン・ヘッセは「人生とは孤独であることだ。誰も他の人を知らない。みんなひとりぼっちだ。自分ひとりで歩かねばならない」という言葉を残しています。出典はどの作品だったのか・・・。たしか、詩集に収められていたような気がします。
この言葉は、現代社会において多くの示唆を含んでいるように思えます。
たしかに手紙 → 電話 → メール → LINEと時代が現代に近づくにつれて、コミュニケーションをするための物理的、心理的な距離は縮まりましたが、不思議なことに心理的な距離や孤独感がかえって増しているという矛盾を抱えています。
SNSを使えば、いつでも誰かとつながっているように感じることができます。ただ、実際に会ったわけでもない人とのつながりは大抵表面的であり、深い理解や共感を伴わないことが多いでしょう。SNSの投稿1回でできるメッセージのやりとりなんて、100文字程度が関の山ですから。ヘッセの言葉は、こうした状況下で「本当の意味で他者と理解し合うことの難しさ」を指摘していると言えます。現代の「つながり」は、それが増えれば増えるほどかえって孤独感を強める方向に作用するおそれがあります。
残念なことに、デジタル技術が進歩すればするほど、便利になる一方で幸福感はそれに比例しません。
AmazonもYouTubeもなかった頃を思い返していただきたいのですが、当時の自分と今の自分とで日々感じている幸福感には大差がないはずです。(あくまでも日常生活における便利さではなく、幸福感であることに注意してください。)
他方で、多くの人はとくに仕事のプレッシャーに悩んでいます。正直、インターネットの仕組みを活用して仕事をしている人は、「昔ってこんなにメールが多かったっけ?」と思いながら働いているのではないでしょうか。私もその一人です。このような中で、孤独はしばしばネガティブに捉えられますが、ヘッセの言葉は孤独の積極的な側面をも示唆しています。孤独は自己と向き合う時間を提供し、自分自身を深く理解し、内面的な成長を遂げる機会を与えてくれるものです。
ところで先程のヘッセの言葉は、「自分ひとりで歩かねばならない」という自己責任の重要性をも強調しているようです。現代社会においても、自分の人生を他者に依存せず、自分自身で切り開くという姿勢は重要です。この考え方は、自己成長や自己実現のための原動力となり、困難な状況においても自立した判断と行動ができる力を養うことに繋がります。
また、ヘッセの言葉は内面的な孤独の受容の重要性を示唆しています。現代社会は他者との比較や評価が容易に行われる環境ですが、これに過度に依存すると自己喪失を招く危険があります。孤独を恐れず、自分自身と向き合うことは、真の自己を見つけるために不可欠なプロセスです。人と比べたらきりがありませんし、SNSを使うとかえって不幸になるという話を耳にしたことがありますが、これなんてまさに他者と自分を比べて劣等感を味わい、「そっちがそうならこっちもこうだ」とばかりにキラキラした日常をポストして自分を虚飾で彩るなんて、不健全に決まっています。
こう考えると、ヘルマン・ヘッセの「人生とは孤独であることだ」という言葉は、現代に生きる私達にも示唆を与えるものとなるでしょう。
孤独は自己成長と自己理解のための貴重な時間を提供し、内面的な孤独を受け入れることで、真の自己を見つける手助けとなります。ことさらつながり(私の嫌いな言葉)が強調されがちな現代社会の中で、この孤独をどのように捉え、活用するかが、個々人の幸福と成長にとって重要な鍵となるでしょう。
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