私がマッチングアプリを使いはじめて早くも2年半くらい経過しました。そんなに長く使っているということは・・・、つまりそういうことです。実年齢とか低身長(男で156cm)とかが悪影響を及ぼしているのだろうなというのはなんとなく分かります。本当のところは確かめようがありません。立ち去っていった女性に対して「どうしてですか?」と問いかけても答えが返ってくるはずもなく、もしも返ってきたとしてもそれが彼女たちの本当の気持ちを正確に記述したものとは限りません。たぶん相手を傷つけまい(そして逆ギレされたくない)として、善意の嘘が書いてあるでしょう。

そういう私が若林正恭さんの『ナナメの夕暮れ』を読んでいると、なんだか自分みたいな奴がいるなという感想を持ちました。
合コンには良い印象を持てずにいたという若林さん。
そんな僕でも、30代前半になって個室の居酒屋を予約できる金を手に入れると、女の子と二人で飲みに行くこともあった。
1時間くらい頑張って話を盛り上げたようです。さすが芸人。ところが、
「ちょっとトイレ行ってくるね」
今までの脳のフル回転をクールダウンするためにトイレに入る。トイレに一人なのを確認し、大の方に入り鍵を閉め息を吸い込む。
「はあ~~~~~~!」
とてつもなく大きいため息をひとつ。
その後、額を手で覆いトイレの壁にもたれ掛かる。
「あぁ~~~~~、つまらない~~~~~~~」
女の子と話すことが、めちゃくちゃつまらないのである。
いったいなぜ?

実は、若林さんは
「飯なんてなんでもいいと思っていること」
「表参道とか六本木を歩くと吐き気がすること」
「イルミネーションに感動なんてしたことがないこと」
そんなことを微塵も思ってないふりをして、自分が「真っ当な消費者であり、常識を持ち合わせた身軽な30代」を演じているのが苦痛で苦痛で仕方がなかったのである。
と胸中を明かしています。

これは分かります。私も飯は何でもいいです。表参道とか六本木も、そもそも行くことがめったにありませんし、用事が終わったらさっさと帰ります。長居するくらいなら、早く返ってランニングしたほうがよほど得です。イルミネーションだって、電飾の羅列でしかありません。世の中にはもっと美しい風景がたくさんあるのに、苦労してでも見るべき景色はあるのに、よりによってなぜ新宿とかいう何の努力もしなくてもOKな場所の人為的な電飾の配列を見て喜ぶのでしょうか。馬鹿なのか?

それにしても、世の中の平均的女性たちというのは「飯は大事」で「表参道や六本木を歩くと気分が明るくなり」、「イルミネーションを見るとすごく気持ちが高まる」ものなのでしょうか? 若林さんの上記の感想は世の中の平均的男性とさほどかけ離れたものとは思えません。だって、「表参道や六本木が好きだ。よく行く」という男性に出会ったことがありませんし(友だちがいないだけか?)、「イルミネーションを見たらすごく感動した。とても嬉しかった」と嬉々として語る男性も見かけたことがありません(やはり友だちがいないだけか??)。

もしかすると男と女というのは水と油のようなものかもしれません。だったらマッチングアプリなんて本来はマッチングしないものをマッチングさせようとしているわけであって、うまく行かなくて当たり前なんじゃないでしょうか・・・。