Cuvie先生のバレエ漫画『絢爛たるグランドセーヌ』の24巻において新型コロナウイルス感染症のことがすこし話題になっていました。私はそれを見て嫌な予感がしました。そして25巻になると案の定、学校が閉鎖されて各国から留学していた学生たちは本国に戻ることに。
当然ながら仲間たちがバラバラになり奏も日本へ戻ってきました。そして2020年春に見たあの光景が漫画でも再現されてしまいます。ということはこの作品の第1巻は2017年頃だったのか? となり、でも連載開始は2013年だったよな、と引っかかってしまいます。
新型コロナウイルス感染症の拡大を食い止めるために、人との接触を減らすことが課題となり、バレエの公演を始めとして野球だろうがサッカーだろうが学校の授業だろうが、人と会う機会そのものが一気になくなってしまった2020年4月。
私自身は
という記事をその頃公開していました。お読みいただくとおわかりのように、最初から緊急事態宣言などを始めとする対策に対して懐疑的な姿勢でした。投入されるコストに対して得られる成果が均衡しないだろうな、そのツケは特に若い世代だけが教育機会の逸失などの形で一方的に負わされて、数年後には政府の言う事を疑いもせず積極的に従った国民が、その検証も反省もしないままホッカムリして日常に復帰するだろうなということが予感されたからです。
これは的中したと思います。そして私は「うーむ、こいつはみんなで同じことをして一体感を高め、従わない奴を排斥する「仲間ゲーム」だ。こんな奴らの仲間になりたくないわい」、と思って「ゲーム」には全く参加せず、2019年と同じ生活を継続し、定額給付金10万円も受け取りませんでした。
作中でも踊ることは不要不急なのか、という厳しい問いが突きつけられており、それでもいつか舞台に戻ってくることを諦めない姿が胸を打ちます。
でも新型コロナウイルス感染症の話をこの物語に登場させることは必要だったのでしょうか。
ここで思い出すのが、児童文学の名作「ズッコケ三人組」シリーズ。広島県のミドリ市という架空の町が舞台です。作者の那須正幹さんは、自分も被爆者でありながらも、物語が30巻を越えて継続し、ネタに困るようになっても原爆の話だけは持ち出さないことを決めていました。「三人組は平和だからこそ、のびのび自由に活躍できる。生みの親としては、戦争とは無縁でいさせてやりたかったのです」。そのように語っています。
(withnews「「ズッコケ三人組」どんなにネタに困っても、原爆を扱わなかった理由 」より)
私自身も、『絢爛たるグランドセーヌ』に登場するキャラクターたちがどれほどバレエに情熱をもって向き合っているかを知っているからこそ、果たして新型コロナウイルス感染症の話は必要だったのだろうかと思ってしまいます。が、現に作中に描かれたということは、作者がかくあるべしと構想を持って実行したことなのでしょうし、この暗闇を乗り越えてきっと「何か」をそれぞれのキャラクターが掴み取るのであろうと考えます(日本が世界各国の後塵を拝して正常化への道を歩むのは3年後なのだが)。
引き続きこの作品の続刊を見守っていきたいと思います。
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