読売新聞2024年5月21日配信記事「6月からの定額減税、給与明細へ金額明記を義務づけ方針…国民実感へ5000万人対象の異例措置」によると、
政府は、6月から始まる所得税と住民税の定額減税について、企業などに対して給与明細に所得税の減税額を明記するよう義務づける方針を決めた。給与所得者約5000万人が対象の異例の措置となる。6月分の住民税は一律0円とする。いずれも減税を実感してもらうことが狙いだ。一方、企業などは対応を迫られることになる。減税額の明記義務化は、6月1日施行の関係省令改正で行う。
とありました。
簡単に言うと、6月の給与、賞与から一人あたり3万円(扶養家族がいれば一人につき+3万円)の所得税を減税し、6月の給与、賞与でもまだその減税額が残っている場合は7月、8月、それ以後の給与で残額を減税するというもの。
住民税は6月は0円となり(一部対象外の人は除く)、定額減税を反映させた年額を、7月~来年5月の11か月に分けて給与から特別徴収(要するに天引き)することになります。
が、「所得税の減税額を明記するよう義務づける」というので、6月の給与明細を見ると「所得税定額減税額 -30,000円」などと書け、ということが言いたいようです。所得税が35,000円だった人は、「所得税 5,000円」になるのではなく、「所得税 35,000円」「所得税定額減税 -30,000」と給与明細に表示させろ、と言うことですね。
うーむいかにもクソ政府の考えそうなことです。
「ほら、これだけ所得税が減税されているよ。ナイス政策だろ」というありがたみを全国津々浦々のサラリーマンに味わってもらうために、給与明細に表示しろと。つまり各企業の給与計算システム運用者(および、そのシステムの販売会社)は給与明細に表示させるためにプログラムの改修を行う必要があり(もうどこの企業もとっくに対応済みのはずだが)、政府の宣伝の片棒を担げということなのでしょう。あほくさ・・・。
それを言うなら、給与明細には社会保険料の事業主負担分も明記したらどうでしょうか。社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料については、決められた保険料を会社が50%負担する仕組みになっています。
それは一体いくらなのか? 協会けんぽのR6年度保険料率(東京都)によると、たとえば標準報酬30万円の場合29,940円。半分の14,970円は事業主が払っています。厚生年金保険料は54,900円ですから27,450円は事業主が払っています。残りの半分は労働者の給与から控除されます。半分を会社が負担してくれていると言っても、およそ4万3千円の負担はデカい。
こうしたことは給与や社会保険料計算の実務に携わってみて初めて知ること。もちろん、会社が賃上げすれば社会保険料は連動して負担が重くなります(賃上げすると社会保険料の事業主負担分も増えます)。社会保険料がこんなに高く、労働者の生活を圧迫しているのは明らかですが、なぜかいつもスポットライトが当たるのは消費税。給与明細に社会保険料の事業主負担分も記載すれば、労働者のみなさんも「こんなに負担が重いのか!」という意識が共有され、政治参加への意欲も高まると思うのですが、いかがでしょうかクソ政府さん。
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