私は民間の研究機関のようなところで働いています。といっても別に研究者ではなく、ロケットとかミサイルとかジェットエンジンとかを開発しているわけでもなく、これといって芸のないサラリーマンです。本当に芸がありません。
ただ曲がりなりにも人事とか給与計算とかは向いていたようなのです。
ようなのです、と書いたのは、学生時代は数学が苦手で高校のときは数学のテストで0点を取ったことがあります。でも、私は私大文系志望で英語、国語、地歴が入試の出題科目だったので「0点か。入試と関係ないな。別にいいな」と思っていました。とにかくそれくらい数学が苦手だったのです。
しかし給与計算には向いていたようなのです。なにしろ計算が終わるまで黙々とエクセルとか給与計算ソフトを使って計算していればいつか終わりにたどり着きます。別に人と会話しなくていいのも嬉しいです。というか無理に話しかけられるとタスクが分断されて計算ミスの元になります。というわけで黙って計算していればいい、というのは「人間関係が減れば減るほど嬉しい」という私の性格にフィットしました。
というわけでいつの間にか私は給与計算のベテランという扱いになってしまいました。別になりたくてなったわけではないのですがとにかくそうなってしまいました。
ただ、永遠に私がこの仕事をするわけではなく、やがて上司から「この後輩に業務を引き継ぎなさい」と言われました。というわけで仕事のやり方を教えて1年近く経過しようとしていますが・・・。
仕事の中には、引き継げないものもある
たとえば年末調整をするためには何をいつまでに実施しなければならないか、とか、源泉徴収票の発行方法とか、新規で採用した人の住民税はどうやって給与から控除するのか、とか、月の途中で育児休業を取得する(または、育児休業から復帰する)場合の給与の日割計算の方法などは教えれば伝わります。最初はあまり理解されなくても数をこなしているうちに板についてきます。
が、引き継げないものもあるということに段々と私は気づいてきました。
それは、「この仕事はこれくらいのクオリティが求められているのだろう(と仮定してみる)。だったらこれくらいの工数をかければいいな(と想定し、実際にやってみる)」という見立てに基づいて作業ができるか、できないかということです。
私なら、例えば人件費のシミュレーションをしてほしい、と言われれば「用途はこれか。だったら精度はそこまで求められていないな。1、2時間くらいでできるものを提供しよう」と想像して本当に1時間ちょっとで見切りをつけて終わらせます。
ところが、そういう見立てができないと、1、2時間の作業で十分なところを半日もかけてごちゃごちゃと(計算結果に大差はないのに)考えて(本当はそこまでの精度は不要かもしれないのに)資料のクオリティを上げようとしていつまでも引っ張ることになるのです。でも給与計算というのは、毎月決まって支給される給与支給日の数日前には銀行送信データが整っていなければなりません。つまり明確に「締切日」というものがあります。その締切日までに、いかに「本丸」を突いて(給与計算そのものを確実に実施して)、それ以外の要衝でもなんでもない支城は適当に相手をするか(適当なところで見切りをつけて、希少資源である時間を節約するか)といった見極めがカギとなります。
「仕事が速い人」は、そういう判断なり仮説立てなりができる人のことを指すのでしょう。これに対するセンスがあるのとないのとでは、大違い。対して重要ではない仕事の相手をいつまでもしていると、一番大事な仕事に向き合う時間がどんどん圧迫されてしまいます。
・・・という時間やペース配分をどう調整するかというのは、仕事をする一人ひとりの性格に左右されるらしく(個人的見解)、どうやら教えることができないようなのです。
・・・そして、時間に対する感覚が合わない人と一緒に仕事を組むことになると、イライラする羽目になるのです・・・。これが今の私なのでした・・・。
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