ヴァイオリンというのはやたらと高いもの。初心者セットは3万円くらいから買うことができます。でもストラディヴァリウスとかグァルネリとかになると10億円を超える価格で取引されます。そうなってくるともう個人の財布でなんとかなる桁ではありませんから、メセナ活動に熱心な企業とか公益財団法人〇〇とかが所有している楽器を貸与してもらうほかにありません。実際に、「私の使っている楽器はストラディヴァリウスです」と言っているヴァイオリニストもプロフィールを読むと「このストラディヴァリウスは、株式会社〇〇から貸与されている」などと書かれてあったりします。
ヴァイオリニストの辻久子さん。1973年に自宅を売って3500万円でストラディヴァリウスを手に入れたことが新聞記事にもなりました。
戦前に天才少女と注目され、国際的に活躍してきたバイオリニストの辻久子(つじひさこ)(本名坂田久子(さかたひさこ))さんが十三日、大阪市内で死去した。九十五歳。大阪市出身。葬儀・告別式は近親者で行う。女性奏者では諏訪根自子(ねじこ)さん、巌本真理さんと共に楽壇をリード。五五年に来日したソ連(当時)の巨匠ダビッド・オイストラフに認められ、ソ連や欧州を演奏旅行するなど、意欲的な活動を続けた。七三年に自宅を売って名器ストラディバリウスを三千五百万円で購入し、話題を集めた。(東京新聞2021年7月14日記事「辻久子さん死去 バイオリニスト」より)
このほか2002年には千住真理子さんがストラディヴァリウス「デュランティ」を購入。推定価格は2億円ほどだったでしょうか。ご兄弟の力も借りつつ、ローンを組んでなんとか手に入れた名器でした。思えば、このころが個人の経済力でどうにかなる最後の時代だったのでしょう。
さてそんなとんでもない金額のヴァイオリンは一般人には無縁のこと。サラリーマンともなればヴァイオリンを購入するといっても数万円から、上はだいたい車1台分くらいが目安になるでしょう。カローラが280万円くらいですから、まあ常識的に考えてこれがリミットでしょう。
ただ、「念願かなって高いヴァイオリンを買ったぞ!」と息巻いても周りを見るともっと高いやつを持っている人がいたりして、劣等感を感じることも・・・?
他人と比べるとやはり不幸になるらしい
なぜ他人と比べると不幸になるのか。『「幸せをお金で買う」5つの授業』という本に書かれている、ボールペンを使った実験が参考になるでしょう。
コーネル大学の研究者は、学生たちに高機能のボールペンを「賞品ですよ」と言って渡し、すぐに使ってみてくださいと伝えました。
他の賞品が、削っていない鉛筆や袋入りの輪ゴムなどだったときには、学生たちはボールペンを絶賛しました。別の学生のグループの前には、同じボールペンをUSBメモリや革表紙の手帳と並べておきました。すると、もっと上等な賞品がそばにあったせいでボールペンの評価はがた落ちになったのです。このシンプルな研究から、人間が幸福を感じるのを妨げる大きな障害の1つがはっきりとわかります。私たちは、それよりもよい品物が手に入ることを知らなければ、手元にあるもので十分幸せを感じられるのです。
幸せの国と呼ばれていたブータンも、この国にインターネットが普及すると幸福度が大幅にダウンしているのは有名な話です。先進国の人びとの暮らしぶりがわかると、自分たちは貧しい生活をしているということをはっきりと悟ってしまったからだとか。
もっといいものがあると知らなければそもそも他との比較を始めることもなく、「知らぬが仏」であってもメンタルヘルス的にはずっと良好であったはずです。
というわけであなたが苦労してお金を貯めて買ったヴァイオリンなのであれば思い入れもひとしおのはず。他人の楽器との比較は無意味でしょう。もっと高い楽器があったとしてもあなたとの相性が良いかどうかは別ですし、高かろうが安かろうが楽器はあくまでも「道具」であって、使いこなす人間に相応の実力が伴っていなければストラディヴァリウスといえども猫に小判ですから。
ちなみにヴァイオリンの買い替えを検討しているのであれば、急いだほうがよいと思います。ヴァイオリンの大半はイタリアなどからの輸入品ですが、日本以外の先進国と日本の国民所得はますます開いてゆく(つまり日本が相対的に貧しくなる)だろうと予想します。そうなると「10年前は100万円で買えたのに、今では130万払っても買えない」ような状況になっていくはずですから。いえ、1~2年程前からその傾向は明らかになっていますね。
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