ヴァイオリンを始めてからわりとほとんどの人が簡単に挫折します。何しろ難しすぎます。車の運転とかシチューの作り方とか英検2級とかと比べるとハードルが高すぎます。チューニングからしてやりづらいです。音程は取れません。いつまでたってもギコギコ音から脱却できません。そのくせ先生に習うための月謝は1万円くらいします。嫌になって止めます。それが普通の人の感覚でしょう。

私みたいに延々と続けているのは、友だちがいなくてそれくらいしかやることがないからです。ある意味、友だちがいない根暗で陰キャな性格に救われています。いや、単に狭い道を突き進んでいるだけとも言えるでしょうね。

元NHK交響楽団のヴァイオリン奏者だった鶴我裕子さんが、「ヴァイオリニストになる方法」として、『200CD ヴァイオリン』という本のなかで難易度別の練習曲を挙げています。この本は1999年発行ですから、おそらく絶版になっているはず。私もディスクユニオンで古本を見つけてきました。ただヴァイオリンを習う道しるべというのは20年程度で変わるはずもありませんから、十分参考になるでしょう。

まずは「鈴木鎮一バイオリン指導曲集」。(実際には教則本は「これでなければ」というものはなく、先生の手づくりでもOKだとか。)そして音階は小野アンナ。「初心者に向いている」。・・・って私は何年もこれを使っていて、いつまでたってもカール・フレッシュに行けないんですけど・・・。この他、セブシック。これも定番ですね。

練習曲はカイザー、ドント、クロイツェル。これらが終わるころにはパガニーニ。でもパガニーニを立派に弾けるなら東京藝術大学の入試にもチャレンジできちゃいますね。

肝心の曲としては、最初のまともな曲はザイツの協奏曲。そこからベリオ、アッコ―ライ。ダンクラの「エア・バリエ」もありますが鶴我さんは「ボンクラ」を連想して好きではなかったそう。これらを経てヴィヴァルディの協奏曲。この本ではどの協奏曲かを明示していませんでしたが、曲順から察するにト短調の協奏曲でしょう。これと並行して「タイスの瞑想曲」のような有名な小品を身につけるのがよい、としています。理由は、このころにはあなたがヴァイオリンを弾けることが周りに知られているので、「何か弾いてよ」と言われたときに備えるのだとか。たしかにダンクラとかアッコーライって一般の人にしてみれば「なんじゃそれは」で終わってしまいますからね。

ここまで来ると、もう名曲を手当たり次第になるのだとか。ヴィオッティ、シュポア、ヘンデルのソナタ、そしてモーツァルトの協奏曲。さらにはメンデルスゾーンの協奏曲の楽譜を入手して、自分の好きな部分だけ弾いてみるのもアリ。

鶴我さんの経験としては、初めてその曲に手を付けるときは完璧を目指すのではなく、色々な曲に手を染めるのも良い、としています。そしてその後で「これならレパートリーにしてもいいかな」という曲をチョイスして精度を向上させていくのがいいそうです。確かに、有名ソナタや協奏曲を素人が完成させようとすると先生の指導を受けながらでも1年はかかります。1年かけました、でも好きになれませんでしたでは1年を無駄にしてしまいますから、投資のようなものだと考えて安い出版社の楽譜を色々買ってきて、かじってみるというのはいいアイデアです。私はヴォーン・ウィリアムズの「あげひばり」が好きなんですけど、こりゃスケールがきちんとできないと歯が立たないだろうな・・・。